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自己受容は、たどり着く場所ではなく ―― もがき続けるという、長いプロセス

「管理職の期待・実態・課題」に関する意識調査レポート

最近、若い世代の人が「成長より、受容が大事」と言うのを耳にしました。
その感覚に、私は深く共感しています。「成長し続けなければ価値がない」という強迫に、多くの人が疲れている。だからこそ「いまの自分を、受け入れたい」という願いが立ち上がってくる。これは時代の本質を突いていると思うのです。

ただ、正直に言えば、少しだけ、ひっかかってもいます。
その「受容が大事」という声の奥に、どこか「受け入れてほしい」と、外に求めるような気配を感じることがある。誰かに認めてほしい、居場所がほしい、そのままの自分をよしとしてほしい。その気持ちは、痛いほど分かります。分かるのですが――本当の自己受容とは、誰かにしてもらって得られるものなのだろうか。そんな問いが、心に残りました。

誤解のないように言えば、受け入れてもらうこと自体は、大切です。人は、決して強くない。弱っているときに、誰かが受け入れてくれる。その安心が、次の一歩の支えになることは、確かにあります。「受け入れてほしい」という願いは、わがままではなく、自然な出発点です。

ただ、それは入口にすぎません。受け入れてもらう安心があっても、そこに留まり続ける限り、渇きは癒えない。本当の自己受容は、してもらって手に入れる“状態”ではなく、自分で歩いていく“プロセス”だからです。

あるマネジャーのこと

ずっと成果を出し続けてきたあるマネジャーのエピソードです。
はたから見れば、順風満帆です。けれど、どこか苦しそうでした。本人いわく、去年までは「体に鞭打って頑張っていた」と。だから期末になると、抜け殻のようになって疲れていました。成果は出ている。それでも、自分を受け入れられてはいなかったのです。成果と自己受容は、別物なのだと、彼の姿から教わりました。

上司も、彼にずっと言い続けてきました。もっと自分らしくていい。もっと人に任せていい。頼ることは、弱さではない、と。けれど、言葉をかけるだけでは、なかなか変わりませんでした。

転機は、部下や同僚から受け取った、360度のフィードバックだったと思います。そこには、上司が言い続けてきたのと同じことが書かれていた。「もっと、〇〇さんらしくあってほしい」。上からの言葉と、周囲からの言葉が、重なった。自分は、このままの自分で、受け入れられている――そう感じられたとき、彼の中で、ようやく何かが動き出したのだと思います。受け入れられる安心という入口は、こうして、周りの人がつくるものなのかもしれません。

今年の彼は、違いました。抜け殻にならずに、期末を迎えられた。苦しくない、と言う。表情は柔らかくなり、地に足がつき、そして――むしろ、力強くなりました。自分らしさを受け入れることは、丸くなることではなかった。ブレずに事業を推し進める、静かな覚悟へと変わっていったのです。

もがき続けることが、受容そのものだ

話には続きがあります。
彼はいまも、向き合い続けています。自分らしさを受け入れたその先で、今度は戦略を描く壁、事業を具体化して推進する壁の前に立っている。ひとつ乗り越えたら、また次の壁。受容が起きても、格闘は終わらないのです。

私は、これでいいのだと思います。むしろ、これこそが本質だと。

自己受容とは、静かにたどり着く安らぎの場所ではありません。組織との葛藤、他者との葛藤、そして何より、自分自身との葛藤。それを繰り返しながら、うまくいかない自分に苛立ち、それでも投げ出さず、また向き合う。その揺れの中で、少しずつ「このままの自分でも、いい」と思えてくる。しかしまた次の壁で揺らぐ。その繰り返しです。

大事なのは、この「もがき」を、受容できていない未熟な状態だと捉えないことです。もがいていること自体が、すでに自己受容の営みなのです。自分から目をそらさず、格闘し続けている。それは弱さではなく、力強さの証だと、私は思います。

慶應義塾大学の花田光世先生は、自己肯定感でも自己効力感でもなく「自己受容感」の大切さを説いています。自分の肯定できない部分も引き受けて、その上で一歩を踏み出そうとする人にこそ、強くなる可能性が芽生える、と。もがきながら自分を引き受けていくその歩みは、決して後ろ向きなものではなく、強さが育っていく、その過程なのだと思います。

だとすれば、自己受容に「完成」はありません。ぴたりと揺れが止まったときは、たどり着いたのではなく、考えることをやめてしまったときなのかもしれません。

私自身も、その途中にいる

これは、若い世代に向けた話でも、誰か特定の人の話でもありません。私自身の話でもあります。

マネジャーになりたての頃、自分が何を信じていいのか分からず、弱さなど見せられませんでした。いまは、少しは見せられるようになった。けれど、自分を完全に受け入れられているかというと、まったくそんなことはない。経営の判断に迷い、後悔し、「これでいいのか」と揺れ続けています。私もまた、もがいている途中の、一人にすぎません。

だから、もし今、うまくいかない自分に苦しんでいる人がいたら、こう伝えたいのです。その苦しさは、あなたが未熟だからではありません。もがいているその時間こそが、自分を引き受けていく、確かなプロセスなのだ、と。

急いで、答えを出さなくていい。「受け入れられた」という終着点を、探さなくていい。揺れながら、もがきながら、進んでいく。その歩みそのものが、自己受容なのだと思います。

「管理職の期待・実態・課題」に関する意識調査レポート
この記事を書いた人
吉田 実
誰もが持っている「無限の可能性」と「目が輝く権利」。一人でも多くの人の「イキイキ」のために、これからも邁進していきます!
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