皆さん、こんにちは。シェイク松林です。
今回のキャリア自律コラムのテーマは「キャリアの可能性を拡げるMustへの向き合い方」です。
自社の社員を見ていて、こんな場面を見たことはないでしょうか。
・その人の将来を考えると絶対に向き合ってほしい仕事・課題なのに、なかなか向き合ってもらえない
・興味関心から外れる仕事を任されると、モチベーションを保てず、作業モードになってしまう
・失敗を恐れて、自分のできることの範囲内で仕事を受けており、新しいことに挑戦しない
見ている側からすると、「この仕事や経験をうまく活かせば、きっともっと成長できるのに…」と歯がゆい気持ちになることがあります。
多くの人はキャリア開発と聞くと、
「やりたいことや興味(Will)を追い求める」
「自分の強みやスキル(Can)を伸ばす」
そんなイメージを思い浮かべることが多いかと思います。もちろんそれは大切です。
しかし、忘れられがちなもう一つの重要な要素、それが「Must」です。
本コラムでは、重要だけど向き合うためにはパワーが必要になることが多いMustに、どのように向き合えば、自身のキャリアの可能性を拡げていけるのか整理したいと思います。
Mustに向き合うことがキャリア開発においてなぜ重要なのか
信頼とキャリアチャンスに繋がる
やりたいこと、興味のあることがあったとしても、全員の希望を100%叶えられるわけではありません。
それでも、「この人に任せたい」と思われる信頼を積み重ねることで、より多くのキャリアチャンスを引き寄せることができます。
その第一歩は、与えられたMustに真摯に向き合い、成果を出すことです。
他者から頼られ、貢献実感がある、心理的に充実した居場所ができる
キャリア充実を感じ、イキイキと働けるような環境を、会社が用意すべきという側面もあります。
しかし、それを会社任せにせず、どのような環境、キャリアフェーズでも、自分の役割、居場所を創造し続けていく当事者意識と力(キャリアコンピタンシー)は、自分の人生において更に重要です。
以前のコラムにも書きましたが、Mustに向き合うことは、Canの拡大にも繋がり、他者から頼られ、貢献実感がある、心理的にも充実した居場所づくりの一歩目になります。
Willの発見・磨くきっかけになる
我々は、落ち着いて自分のことを棚卸して、自身の中にあるWillに想いを馳せれば、Willが見つかると思いがちですが、それだけでWillを見つけられる人は多くはありません。
皆さんも最初は乗り気ではなかったけど、やっていくうちにその仕事の面白さや意義を見出し、これが自分のやりがいやWillかもしれないと気づくことができた経験をお持ちかと思いますが、いかがでしょうか?
自分がどんなことに興味関心を持ち、何に動機づけられる人なのかに気づけるような、新たな自分の発見に繋がるような経験が、Willを発見して磨いていくことにつながります。とした時に、組織からの期待や要請についても選り好みしすぎずに体験してみて、その体験から自分の興味関心、Willを発見し、磨いていく、そのような姿勢が重要となります。
Mustを2つの軸でとらえ、キャリア開発につなげる
Mustというものは、一面的な「やらされ仕事」ではありません。
組織軸と人生軸の2つの視点でとらえることで意味が深まり、キャリア開発に向けた良質な経験となっていきます。
組織軸のMust:組織からの期待を理解しにいく
1つ目は、組織軸のMustです。
組織から期待されている、求められていることと、その意味・背景を自分なりに理解・腹落ちすることです。
ポイントは、それらを伝えられるのを待つのではなく、自ら確認し、質問し、すり合わせに行く姿勢です。
・現在の会社状況、自部署の状況は、どのような状況で、何が課題なのか?
・自部署に求められている成果を考えた時に、自身の職務をどうしていくことが期待されているのか?
・自分に何が期待されていて、何は期待されていないのか?
・目の前の期待に応えていくことで、どんな姿に成長してほしいと思っているのか?
上席の方も、上記のような情報を正しく、誤解のないように伝えたいと思っているはずですが、伝わりづらい状況は多々おきます。
限られた情報を咀嚼して自己解釈するだけではなく、質問してすり合わせに行くことが、自身の働くモチベーションにも繋がり、結果として、自身のキャリア開発においても良質な経験になっていきます。
人生軸のMust:自分の人生で向き合うべきことを定義する
2つ目は、Mustというものを、自分の人生軸でも考えてみることです。
これから続く長い人生をイキイキと生きる、幸せに生きるということを考えた時に、今の自分が向き合うべきことは何か?を考えてみることです。
様々なことに挑戦する人生でありたいと考えている人であれば、失敗や他者からの目線を気にせずに、一歩を踏み出す、挑戦することに向き合うべきかもしれません。
何事にも面白み、楽しさを感じられるような人生でありたいと考えている人であれば、たとえ面白いと思えないような仕事にも、自ら興味関心や面白みを見出して没頭していくような姿勢と力を鍛えていくことが重要かもしれません。
ありのまま自然体で生きれる人生でありたいと考えている人であれば、他者からの期待やプレッシャーに囚われて振り回されるのではなく、自分の意思やスタイルを貫き通す力を鍛えていくことが重要かもしれません。
このように自分の人生にとってのMustは何かを考えると、組織軸のMustへの向き合い方、意味も変わってくるのではないでしょうか。
おわりに
ここまで記載してきましたが、私自身も組織軸のMustに対して、無理やり意味づけしようと頑張って疲弊した経験があります。
「この仕事は会社にとって重要な仕事だ」「自分はマネジャー職だからこそ●●な仕事をすることが自分の役割だ」など、自分の感情や自分軸を抑え込んで、無理に自分を納得させようとしていたことが原因でした。
転機となったのは、本コラムで記載した自分の人生にとって必要なMustを定義し、それを組織のMustと掛け合わせるという方法。
それにより、無理やりの意味づけが、自然で納得感のある意味づけに変わり、気持ちが楽になりましたし、エネルギーが湧くようになりました。
「組織が求めること × 自分の人生で向き合うべきこと」という2つの視点でMustをとらえるという考え方が、各社のキャリア自律施策の推進に少しでもお役に立てたら幸いです。