皆さん、こんにちは。シェイクの池田です。
弊社は、リーダーシップ開発・キャリア自律を軸とした人材育成・組織開発を通じて、「個人」と「組織」が共創する社会を実現するべく、日々事業推進をしております。
最近は、管理職育成の刷新やマネジメントスタイルの変革について、ご相談をいただくことも増えてきています。本コラムでは、「イマドキの管理職に求められるピープルマネジメント」をテーマに時代の潮流やマネジメントスタイルの変化、また職場での実践につなげるためのポイントについてお話をしたいと思います。
ピープルマネジメントとは
近年、「人材」を「人財」として表して、これまで以上に「ヒト」を組織における重要な経営資源として位置付ける会社が増えてきました。
その中で、単に組織の目標達成のための仕事やタスクを管理・監督するのではなく、個々人の成長や従業員満足度、モチベーションを高め、多様な社員一人ひとりを活かし、組織としての成果創出、顧客価値やエンゲージメントの向上につなげるマネジメントスタイルがより重要になってきています。
従来の管理職は、タスク管理(業務の進捗や達成状況の管理・監督)を中心としたマネジメントを行っており、リーダーシップスタイルとしてもトップダウン型・指示命令型が一般的でした。また、組織に所属するメンバーには明確な役割・目標が割り当てられ、管理職の管理・監督のもと、一人ひとりが組織の成果の最大化や目標達成に向けて着実に実行することが求められていました。
しかしながら、現在の管理職には、従業員一人ひとりにモチベーションやウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態)、成長・キャリアの支援が求められ、管理職が担うマネジメントの範囲、対象やテーマに変化が生まれてきています。
このような状況の変化で、管理職は、1人ひとりのメンバーの状況や状態を把握し、メンバーに寄り添いながら、それぞれの成長や能力を引き出し、可能性を最大化することが求められています。
なぜ、ピープルマネジメントがより重要となってきたのでしょうか?
その背景をまずは考えていきましょう。
ピープルマネジメントがより重要となった理由・背景
人材不足・雇用の流動化
少子高齢化等を理由に国内の労働人口が減少する中、各企業内においては人材の確保、特に優秀な人材の確保と持続的な人材開発・人材活用が重要な課題となっています。
雇用の流動化が進み、転職が容易な労働市場の中で、優秀な人材の確保・定着のためには、従業員一人ひとりの働きがい・やりがい、組織へのエンゲージメントを高めるピープルマネジメントが重要です。
個人のキャリア自律の必要性
VUCAと呼ばれる時代、社会の状況が流動的に変化し、顧客や社会のニーズやビジネスモデルも大きく変わり続けています。組織が変化に対応し続けるためには、組織風土改善や業務プロセス改善も必要ですが、組織内で働くメンバー個々人の継続的な学習やスキル開発も必要となります。メンバーの成長意欲やキャリア形成への意識を高めるために、管理職による日々の成長やキャリア自律への支援の必要性が高まっています。
働き方の多様性
「Z世代」という言葉にあるように、組織内で様々な価値観を持った世代が増え、会社・組織に対する考え方、個々人の働き方も多様化しています。特に、近年では「自分らしさ」が尊重され、人としての尊厳を守る働き方、「個人の幸福やウェルビーイング」が重視されてきています。このような状況下では、従来型の画一的な育成スタイルではなく、価値観や意向が異なることを前提に、1人ひとりの可能性や個性を引き出し、お互いの対話を通じて向き合う育成スタイルが重要になってきています。
もちろん、ピープルマネジメントが重要な理由は、上記以外にもありますが、
まとめると、個人が尊重される社会の中で、個人の可能性や能力を引き出すためには組織の環境づくりや支援体制の構築が必要であり、それらのあり方としてピープルマネジメントが注目されているということになります。
ピープルマネジメントにおける管理職の役割とリーダーシップ
ピープルマネジメントを行う上で、管理職にはどのようなことが求められているのでしょうか?
理想のマネージャー像の変化
これまでの管理職には、一言でいうと「強いリーダーシップ」が求められていました。
具体的には、自部署内の業務に精通し、組織の方向性を示し、意思決定力と実行力を持ち合わせたリーダーシップが求められていました。メンバーは管理職の指示に従い、もしくは管理職の指導・支援のもと、組織の目標達成のために確実に仕事を遂行することで評価されるような仕組みが構築されていました。
一方で、ピープルマネジメントを重視する組織においては、メンバーとの対話を重んじ、メンバーの主体性を引き出すような「サポート型」のリーダーシップスタイルも求められるようになってきています。
メンバーとのコミュニケーション頻度を上げる
対話を重視したリーダーシップを発揮するとなると、メンバーとの相互理解、関係構築から始まり、メンバーの行動や状態を観察し、必要に応じて適切に支援することが重要となります。そのため、現在の管理職には、メンバーとの定期的な1on1面談を行っている方も増えています。1on1面談に限らず、日ごろからの声掛けやちょっとした相談に応じるなど、メンバーからも声をかけやすい管理職自身の雰囲気、職場環境づくりも必要でしょう。
メンバーへの支援の質の向上
メンバー1人ひとりの成長やキャリアを支援し、モチベーションを高めていくためには、
管理職自身の支援スキル、日々の育成・かかわりの質を向上させることも不可欠となります。
メンバー1人ひとりの寄り添いつつも、組織としての目標達成も決して疎かにしてはならず、「両軸」でメンバーにかかわることが重要となります。そのために、個々人が達成したいと思える組織目標やビジョンを設定することと、それらをメンバーに語り相互のコミットメントを高め、メンバーの納得感を引き出すスキルが必要となります。
また、個人の成長度合いや強み、特性に合わせて、業務をアサインし、適切な目標を設定するスキルも必要となってきます。
目標の設定後は、日々の業務支援・サポートや日々の仕事のやりがい・今後のキャリア等について対話するための1on1面談スキル、メンバーの成長やスキルアップを支援するためのフィードバックスキルなどを高めることが重要です。
多様性に関する理解とアンラーニング(学習棄却)
これからの管理職は、多様な価値観やバックグラウンドを持つメンバーと働くことが求められます。年齢の離れた新しい世代がどのようなことを考えているのか?それらに興味を持ち、理解しようとする姿勢が求められるでしょう。
また、自分自身がどのような価値観・仕事観・キャリア観を持っているのか?を整理することは、メンバーとの対話においても役立つことです。同時に、時代にそぐわない考え方や判断軸に関しては、本当にそれが必要なのかを考え、場合によってはアンラーニング(学習棄却)する必要があるでしょう。
※アンラーニング(学習棄却)・・・古い知識や概念、価値観を捨て、意識的に新しい知識やアイデア、スキルを習得すること
ピープルマネジメントのメリット・デメリット
メリット
組織へのエンゲージメントの向上
管理職がピープルマネジメントを実践することで、メンバーが自分の存在が組織において尊重されていると感じ、周囲のかかわりへの感謝の気持ちと組織や職場への帰属意識の高まりをもたらします。これらが仕事への意欲や成長欲求を引き出します。
離職率の低下と優秀な人材の確保
自社で働くことで得られる成長や市場価値の向上など、メンバー側のニーズにこたえる環境や支援があることは、離職を防ぐだけでなく、優秀な人材を確保するための採用の競争力が高まります。
挑戦を促す組織風土の醸成
個々人の能力や可能性がより発揮され、また新たな取り組み・提案活動など挑戦的なアクションが奨励される組織では、組織全体としても挑戦的な行動が増えていきます。こうした取り組みにより、組織全体が活性化し、イノベーションが生まれやすくなったり、顧客への更なる付加価値向上につながります。
デメリット
管理職の負担が増える
現在、多くの管理職は自身もプレイヤーとしての目標や業務を抱えています。また、組織目標の責任を負い、メンバーやチームの仕事の進捗管理、労務管理等を行っています。そのうえで、各メンバーと1on1面談を実施し、個別に向き合う時間を確保するとなると、必然的に管理職にかかる精神的・時間的負担は増加していきます。
組織の目標達成や成果とのつながりが見えづらい
ピープルマネジメントは長期的な効果を狙った取り組みであり、短期的な組織の目標達成や業績への効果が見えづらい点がデメリットとしてあげられます。メンバーとの接点・かかわりが少ない段階であったり、業務習熟度の低いメンバーでは、手間・時間がかかる一方で目に見える成果や手ごたえを感じられず、継続的に行動するには一定の忍耐力が必要です。
従業員満足度サーベイの点数やメンバーからのフィードバックを得るなど、業績指標等の以外の短期的なマイルストーンの設定が必要でしょう。
管理職の個人差による効果のばらつき
管理職自身の「ヒト」への興味関心度合いや育成力などによって、ピープルマネジメントの実践度合い・メンバーへの影響度合いが変動する可能性があります。また、属人化しやすい能力・スキルであるがゆえに、マネジメントスキルとしての標準化や次期管理職への継承が難しい部分もあります。このような課題に対しては、管理職の育成スキル向上を目的とした継続的なトレーニングや、育成の得意不得意を補完するチーム型のマネジメント体制(育成の役割を細分化し、リーダー層などが管理職の役割を一部担う形)を導入することが有効です。
ピープルマネジメントを促進するためのトレーニング例
事例① マネジメントスタイル変革
https://shake.co.jp/service/organization/#management-style
旧来の業務管理型・トップダウン型のマネジメントスタイルからの脱却を図り、メンバー1人ひとりの成長支援を行うマネジメントスタイルへの変革を目的としたプログラムです。
研修と職場実践を合わせながら、マネジメントスタイルの変容への確かな手ごたえをつかむ形に設計されています。
事例② シェアドリーダーシップ型組織づくり
シェイクは、管理職1人がリーダーシップを発揮する組織ではなく、メンバー全員がリーダーシップを発揮する「シェアド・リーダーシップ型」の組織づくりを目指しています。1人のリーダーがチームを牽引するのではなく、1人ひとりが自分の強みを活かしながら、リーダーシップを発揮し、相互に影響力を発揮する組織は、特に不確実性が高い状況においては、生産性が高くなることが研究によって示唆されています。
本プログラムでは、研修とサーベイを組み合わせ、職場の現状認識を深め、理想の組織像を明確にしていきます。同時にピープルマネジメントの観点として、メンバー1人ひとりの強みや意向の把握、権限委譲や仕事のアサインの仕方、フィードバックといった具体的な育成手法を学びます。研修実施後は振り返りセッションを設けながら、行動改善を促し、理想の組織づくりとピープルマネジメントを目指すプログラムです。
参考:https://shake.co.jp/news/240726/
まとめ
ピープルマネジメントは、組織の成長と成果創出を支える重要な要素であり、管理職には個々の力を最大限に引き出す仕組みと環境作りが求められます。管理職は、業務の進捗管理やメンバー支援だけでなく、メンバーの多様性や個別のニーズに配慮し、柔軟な対応・育成が求められます。今後、人材不足が深刻化していく中で、「ヒト」を組織の中心に据え、共に成長していく姿勢を持つことが、組織全体の成果と持続的な成長につながります。ピープルマネジメントを通じて、組織と個人の「共創」の可能性を広げていただきたいと思います。