皆さん、こんにちは。シェイク松林です。
キャリア自律の推進の為に「上司と部下とのキャリア面談の制度化」や「上司のキャリア自律支援マネジメントの強化」に取り組まれている企業様も多いかと思います。
一方で、上司向けにキャリア面談のスキルトレーニングを実施したが、その後も、キャリア面談が効果的に運用されなかったり、上司のマネジメントが変わらなかったりと、管理職の行動変容、キャリア自律支援マネジメントの浸透に苦慮されている企業様も同様に多いかと思います。
本日は、管理職・上司によるキャリア自律支援マネジメントを強化・浸透させていく上でのポイントを整理したいと思います。
ポイント1.自社なりのキャリア自律の定義と、全社員への共有
前回コラムでキャリア自律を具体的に理解する為のポイント・視点を記載致しましたが、アメリカのキャリア・アクション・センターが定義しているキャリア自律「変化する環境において自らのキャリア構築と学習を主体的かつ継続的に取り組むこと」を、そのまま社員に伝えたとしても、解釈のずれが起き、不具合を起こすことがあります。
例えば、キャリア自律においては、どんな環境・組織においても、キャリアチャンスを自ら掴み、キャリア構築できるだけの信頼感のある自律した人材になる視点が大事です。
しかし、キャリア自律とは、自分が興味ある仕事やポジションを考え、それを叶えていく事だと解釈し、
・部下側は、自分のキャリア意向を主張し、それを叶えてくれるのは上司、会社という認識を持つ
・上司側は、部下のキャリア意向を聞いても、自分には権限(異動など)がないので支援ができないと認識する
・シニアの方は、自分にはもうキャリアアップはないから、上司によるキャリア支援は不要だと捉える
例えば、このような状況が起きているように思います。
抽象的で解釈が生まれやすい概念だからこそ、上司側にも部下側にも共通認識を持ってもらうような働きかけを人事部として実施していくことが重要となります。
自社なりの意味、ストーリーを盛り込んだキャリア自律の定義
例えば「意味ある面白い仕事を自ら作っていく自律的な行動」をキャリア自律として定義している企業や、「複数の強みを掛け合わせて、唯一無二の自分らしい価値発揮ができるように努力し続けること」をキャリア自律として定義している企業もあります。自社の歴史や理念などと結びつける等、自社なりの文脈、意味、ストーリーをキャリア自律に付加し、現場で共通認識が持てるように具体化・定義をしていく事が重要になります。
コンセプトムービーやe-learningによる全社発信・浸透
上記のように自社で定義したキャリア自律を、自社オリジナルのコンセプトムービーやe-learningに落とし込み、発信・浸透を図っていく事も有効な施策です。自社としてのキャリア自律の意味や定義が現場での共通言語になるように、何度も何度も伝えていく事が重要で、キャリア自律研修ごとに本動画を必ず放映し、自社なりのキャリア自律の浸透を図っている企業様もあります。
上司へのキャリア自律支援・研修の実施
上司向けのキャリア自律支援マネジメント研修を実施すると「自分がキャリア支援を受けてきていない」「自分が自律的にキャリア開発をしてきたわけではないので部下のキャリア支援のイメージが湧かない」という声が多く出てきます。おっしゃる通りで支援イメージが湧きづらい面もあるかと思いますので、より丁寧に浸透施策を打つのであれば、部下へのキャリア支援の前に(同じ研修内でも良いので)、上司自身にキャリア自律研修を受講頂き、当事者として自身のキャリア自律を考え、体感して頂くアプローチも有効な施策となります。
ポイント2.上司の役割はキャリアマッチング支援ではなく自律支援
上記1とも通じる部分ですが、上司の役割は、部下のキャリア意向に合った仕事やキャリアを提供する事ではありません。
もちろん部下のキャリア意向が実現できるように上司として部下や会社に働きかける事も大事ですが、それが難しい場合に取り繕って組織側の事情を隠すのではなく、部下を1人の大人として見て、全社員のキャリア意向を実現できるわけではない実情を伝える必要もあります。その上で、平等ではないキャリアチャンスを自ら獲得していけるようになる為にどうしたらよいか?を部下と共に考える姿勢が重要となります。
もしかしたら厳しい事を求めているかもしれませんが、部下の成長、可能性を信じて、以下のように支援の対象ごとにかかわりの観点を変えることが必要です。
若手社員に対して
キャリアの希望を主張するだけでなく、キャリア意向に沿ったチャンスを渡したいと思われるように自律する事に向き合わせたり、今の興味関心に囚われすぎずに様々な経験から自身の土台となるCanを広げる事への意識づけを促したりします。
中堅社員に対して
専門知識、専門スキルを習得してやり切ったと認知するではなく、どんな環境でもキャリア構築していけるだけのキャリアコンピタンシーの発揮を次のステージとして求めたり、また能力の幅、影響力の範囲を広げていく事を求めたり等、キャリアの可能性を広げていく後押しをします。
このように会社や上司が部下に与えるという視点だけではなく、部下がどんな環境、組織でも、自分の居場所やキャリアを作っていける自律した人材に成長できるように向き合っていく姿勢が重要です。そして、その上司の向き合う姿勢が、部下のキャリアエンゲージメントの向上や、会社としての求心力にも繋がっていくのではないかと思います。
ポイント3.上司のキャリア自律支援マネジメントのPDCAが回る仕組み
研修でスキルインプットするだけではなく、上司のキャリア自律支援マネジメントのPDCAが回り、マネジメントがアップデートされ続けるような仕組みを、人事部として作る事がポイントです。
部下にアンケートを取って上司にフィードバックして内省して頂いたり、部下視点で有難かった&改善してほしい関わりを形式知化して、キャリア自律支援マネジメントのナレッジ資料を作ったり、キャリアコンサルタントと共に上司向けのグループ相談会を実施したりなど、上司側のPDCAが回り続けるような仕組みです。
キャリア支援・キャリア面談に関する上司へのフィードバックの仕組みづくり
ある企業様では、オリジナルのキャリア自律支援マネジメントサーベイを開発し、上司と部下のキャリア面談後に、部下にアンケート回答頂き、上司にフィードバックする仕組みを運用しています。日常やキャリア面談における上司のキャリア自律支援が、部下にどう伝わっているか?どんな関わりが効果的なのか?改善すべき関わりは何か?を自己客観視して頂き、上司としてのキャリア自律支援マネジメントをアップデートし続けて頂いています。
キャリア自律支援の効果検証の仕組みづくり
また上記施策は、人事部視点だと上司向け施策の効果検証の仕組みにもなります。
会社全体のキャリア自律支援マネジメントの状況が可視化されるので、その結果を経営報告にも使え、キャリア自律施策を継続していく意味・根拠にしていく事も可能です。加えて、成功事例や課題も明確になる為、人事部としての上司側への追加施策も検討しやすくなり、研修施策のPDCAも回しやすくなります。
このようなPDCAが回り続けるような仕組み作りと実態に合わせた現場支援が、上司の行動変容とキャリア自律支援マネジメントの浸透に繋がっていきます。
各社で上記のような取り組みを行っておりますが、サーベイの数値結果においても明確な変化が表れてきている企業様もございます。ご興味のある方は遠慮なくご連絡頂けたらと思います。
以上、研修を単発研修で終わらせず、上司によるキャリア自律支援マネジメントを強化・浸透していくポイントを整理致しました。
本コラムが各社様のキャリア自律の推進に少しでもお役に立てたら幸いです。