こんにちは、シェイクの犬尾です。
企業が持続的に成長するには強固な組織づくりが大切です。
今回は、「強い組織をつくりたい」「今の組織をより良いものに改善したい」「組織を変革したい」と考えていらっしゃる人に向けて、組織づくりに必要な要素やポイントなどを紹介します。
1人ひとりの能力を最大限発揮できるような組織をつくりあげ、企業の更なる発展を目指しましょう。
組織づくりの目的とは
組織とは、共通のミッション(目的・使命)を追求するために組み立てられた集合的行動と定義することができます。
それでは、組織づくりの目的は何でしょうか?
組織づくりの目的は、企業が持続的に成長し続けるための基盤を構築することです。
組織づくりをしっかりと行うことは、生産的に成果が上がることに繋がり、中長期的により価値を高め、働く従業員一人一人にとってもモチベーション高くより良い居場所づくりにも繋がります。
企業(組織)によってさまざまな組織づくりに向けた取り組みが行われています。
組織づくりは、「組織文化」「組織構造」「人事システム」の3つの要素から成り立っています。それぞれの具体的な内容は以下のとおりです。
組織文化:企業文化が醸成され浸透している
組織構造:従業員の役割が明確化されている、指示系統が確立している
組織人事システム:従業員が高いモチベーションで仕事ができている
上記3点がしっかりと機能している企業は、社内外の変化に素早く対応できます。
組織づくりに力を入れていない企業は、場当たり的な対応に終始し、従業員の入れ替わりや市場の変化にうまく対応できないことが起こります。そのため、業績や成果に悪影響を及ぼすだけではなく、従業員の不信感や離職要因にもなる可能性もあるでしょう。
組織づくりは、企業が継続的に事業を運営していくために、必要不可欠な取り組みと言えます。
組織づくりの3つの基本要素
組織文化をつくる
組織文化は、社風や企業(組織)風土やカルチャーなどと呼ばれており、組織の構成する人たちが共有する信念、価値観、行動規範の集合体のことを言います。
しかしながら、目に見えにくく何となく構築されている組織が多いため、新たな社員が増え規模が大きくなったり、社内外の変化が起こった際には少しずつ歪みが生じていき、ギスギスした職場になってしまうということが数多く起こってしまうため組織文化をつくることは大切です。
組織文化は、よく企業で言われる企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)がまず基軸になります。
近年は、変化の激しい時代であり、事業や組織環境も様々な変貌を遂げており、社員の流動化が促進されていることもあり、この企業理念をハッキリと言語化・明文化され、リデザイン(再構築)する企業も増えている状況です。また、その企業理念を踏まえて、各組織(部門や部署)でも部門の理念を定義して進めている組織も増えてきております。
上記のことからも分かるように、組織文化をつくることに注力している企業が増えています。なぜなら、組織文化は、組織に所属するメンバーの思考・行動に強く影響を及ぼすことが明白であり、意識的だけではなく無意識的にも深いレベルで作用することに繋がり、メンバー同士の相互行為に影響を与えているからです。
ただし、お題目として、理念やメッセージを明示すれば良いわけではありません。
組織文化は、浸透して、従業員一人一人の具体的な行動が変わってはじめて組織文化が構築できたと言えます。
そのためには、理念をかみ砕いて共有し、自分主語で意味を語ると共に、エピソードを語り継ぐこと、職場で一人一人に行動や姿勢のつながりを考えてもらうことが大切になります。
浸透すると、意思決定や行動の迅速化・一体感や帰属意識の高まり・組織アイデンティティが明確になり、他社との差別化要因につながります。よって、少し時間は要することになりますが、多くの組織で見直されて、取り組みを強化しています。
組織構造をつくる
組織構造は、企業の戦略を効率的に実現していくための社内的な仕組みのことです。よって、戦略との整合性が重要となり、戦略が変更すれば、組織構造も変わる可能性がありますし、環境とも適合している必要があります。
代表的な組織構造としては、「機能別組織」、「事業部制組織」、「マトリクス組織」、「プロジェクト組織」などがあります。ここでは、各内容とメリット・デメリットを下記に記載します。
・機能別組織
企業・組織で最もスタンダードな組織構造です。機能別組織は、職能別組織ともいわれ、機能毎に業務を分担し、専門性を高めることで生産性の向上を図ります。
メリット
業務範囲が明確化され、目標設定が容易
分業により各機能の熟練が形成され、専門性が磨かれ発揮しやすい
トップ権限集中型なので統制を図りやすい
デメリット
部門間での垣根が生じやすく、部門(部分)最適に陥りやすい
管理者の責任や負担が大きくなる
全体を見ることのできるマネジメント力がある人材が育ちにくい
・事業部制組織
製品やサービス毎に事業部を編成する組織構造です。事業部制組織は各事業部に研究、開発、生産、営業、販売など、価値提供に必要な機能を備え、事業部毎の自己完結型で商品・サービス提供を行う組織構造になっています。
メリット
顧客ニーズや現場の状況に合わせて迅速な意思決定が可能になる
各事業部が収益責任を負うなど責任の所在が明確になる
管理者の能力を高め、次世代の経営者の養成ができる
デメリット
各事業部の機能が重複することでコストがかさむ(経営効率が下がる)
事業部運営が優先され、企業全体の価値の担保が困難になる
事業部間の競争が激化することでセクショナリズムが発生してしまう
・マトリクス組織
一人の社員が複数の部門に所属し、事業やプロジェクトを行う組織形態です。複数の部門に所属することで、複数の目的を同時に追求することができます(機能別組織と事業部制のメリットを融合)。一方、一人の社員に直属の上司が複数存在することになり、指揮命令系統の煩雑化を招くなど、複雑な組織形態となる。
メリット
環境変化に迅速に対応できる
部署毎の壁が無くなり、様々な調整が容易になる
部署の垣根を超えたコミュニケーションから組織の一体感が生まれる
デメリット
指示命令系統が煩雑化し、意志決定メカニズムが不明瞭になりやすい
業務プロセスの複雑化
考え方の違いが起こり、対立を招く危険性を孕んでいる
・プロジェクト組織
プロジェクトごとに専門スキルを有した人材を各部署から招集し、プロジェクトチームを結成します。プロジェクトが完了するとチームは解散し、各メンバーは元の所属部署に戻るか、また別のプロジェクトに参画していくという要件変更が発生しやすい情報システム会社に多く見られる組織形態です。
メリット
環境や状況の変化に柔軟かつ迅速に対応できる
共通の目的を持ってメンバーが招集され、一体感を生み出しやすい
プロジェクトの目的が明確なため、モチベーションが高まりやすい
デメリット
プロジェクトの評価や処遇が複雑化する
パワーバランスがの維持が難しい
メンバーにかかるストレスが大きくなる
組織人事システムをつくる
組織をより強固にする上で、組織の人事システム、採用・育成・評価・配置(異動)・コミュニケーションや業務フローの改善計画などを整え、変化させていく必要があります。
単にタレントマネジメントシステムなどを導入するだけではなく、中長期的な視点を持って、具体的かつ計画的に進めていく必要があります。
例えば、採用ではどんな人材がどの程度必要になるのかを中長期で計画し、状況次第で変更しながら進める必要がありますし、育成に関しても、ポータブルスキルと専門スキルに分けて、育成ターゲット層の優先順位を定め、誰がどのような形で進めながら磨いていくのかを考える必要があります。
新たなルールや人事システムなどを導入しても、理解が不十分な状況では、従業員は不安に陥ってしまいます。変化させるときには、常に従業員の目線に立ち、理解・納得してもらうためにも丁寧なコミュニケーションをとることが大切です。
特に人的資本経営により、人材戦略の策定が不可欠になり、多様性を認めるマネジメントの難しさに直面している組織が数多く生まれています。組織と働く個人の関係性が、組織(企業)側が働く従業員を守るという関係性から、個の自律と選び選ばれる関係性への変化していく環境下で、キャリア自律をテーマとした仕組みや環境づくりがより推進されている状況になっています。このように、組織の人事システムを整えていくことで、学びが促進され成長していく人が増えていき、相互学習の風土が促進されていきます。
組織づくりで抑えるべき5つの具体的ポイント
組織づくりは、成功すれば企業にとって大きなメリットをもたらします。ただ、設計しただけでは不十分です。機能させるまでが一つのプロセスです。
こちらでは、具体的に抑えるべきポイントを提示いたします。
組織づくりは共通の目的に基づく
組織づくりは、企業(組織)の理念(ミッション・バリュー・ビジョン)に基づいて行う必要があります。
目先の売上や成果を上げることばかりに終始して組織を動かしてしまうと、組織の一貫性がなくなり、組織づくりは失敗に終わります。
もし、ミッション・バリュー・ビジョンが存在しない(定義されていない)のであれば、まずは、それらを設定することから組織づくりを始めましょう。企業理念策定ワークショップなどを実施し、主要メンバーと共に、これまでの過去の歴史や現在起こっていること、今後変化を起こすべきことなどを丁寧に対話をしながら、組織の未来を共に創造する機会をつくり、段階を踏んで策定していきます。そして、常にその理念に立ちかえりながら、組織づくりを推進することが大切です。
今、起こっている事実を踏まえて課題を整理する
強い組織づくりは、組織に起こっている課題の洗い出しが不可欠です。
一般論で大事だと言われていることばかりにアンテナをたてて、自社の課題として設定してしまう組織をよく見かけますが、それでは効果の弱い打ち手になってしまいます。
地に足をつけて、まずは今起こっている事象を洗い出し、課題と因果関係などを整理した上で、自組織が未来に向けて解決すべき課題の特定を行うことが、強い組織づくりに向けた有効な打ち手につながります。組織サーベイなどを活用し、実際のメンバーのリアルな声や傾向などを把握し、その背景や意図などにも丁寧に耳を傾けることが重要です。
メンバーの行動の変化にアンテナを立てる
組織づくりは、計画や仕組みを作るだけでは意味がありません。
メンバーひとりひとりが、理解を深め、納得して動いてはじめて強い組織づくりに繋がります。例えば、理念を踏まえてメンバーの行動が変わって初めて組織文化と言えるので、行動規範など具体的に職場で求められる行動を設定し、望ましい行動や望ましくない行動を明確にしながら浸透を深めていくことと、その具体的な行動の変化を承認し、周囲に浸透させていくアプローチも大切になります。職場での実際の望ましい行動をまとめて、行動指針やクレドのようなハンドブックを作成するとより浸透スピードが早くなります。
企業(組織)の理念に沿った人材の採用や育成を実施する
従業員の理念やビジョンに対する共感・理解を深めることが必要です。
元々在籍しているメンバーが、新たな変化を求めていく上で、求められる考え方や能力も変化(強化)していくことになります。全社的なメッセージだけではなく、具体的なスタンスや職場での行動なども認知して変化が必要なものにはアンテナを立てるようにしていくことが大切です。そのために、自社が求める社員像を設定し、人材能力要件などを具体化することを行い、採用・育成・評価に活用することが必要になります。企業向けの研修などでは、その理念が変更されると強化すべき能力が変わるので、人材育成体系やプログラムの再構築が行われます。
それをしっかり行わないと、職場でのズレが生まれて大きくなるため、正しい動きが取れない組織になってしまいます。
情報や状況をオープン(可視化)にする
組織づくりは、変化や動きが見えにくい傾向があります。推進しようにも、なかなか周囲にもわかりにくいので進みにくさもあると思います。情報や状況をオープン(可視化)し続け、リアルな生々しい情報をメンバーと対話しながら推進していくことが重要になります。
また、一度設計してしまえばそれで終わりというものではありません。社会や市場環境の変化に合わせて、随時変化を起こしていく必要があるので、仕組化していくことも大切です。
常に中長期な視点を持って、変化の兆しを言語化し、PDCAをまわしながら前に進める活動をしていく必要があります。
経営者や組織変革コンサルが活用するフレームワーク
組織変革における的確な分析や中長期視点での課題発見するために、経営者や組織変革コンサルタントなどに幅広く活用されているフレームワークの『マッキンゼーの7S』をご紹介します。
このフレームワークは、組織のパフォーマンスに影響を与える7つの要素に焦点を当てており、これらの要素が整合しているかどうかを評価し、改善を図るためのツールとして利用されます。
昨今、DXやIT・システムというハード面に偏って上手くいかない変革プランを試みる企業は少なくありません。マッキンゼーの7Sを導入することで、変革に時間がかかるソフト面に目を向けやすくなります。より長期視点での課題発見や変革方針の策定につなげられるのです。
それではマッキンゼー7Sモデルの要素について簡単に解説します。
マッキンゼーの7Sモデル
① Strategy(戦略):企業が事業の優位性を保つための強み、戦略上の優先順位や方向性
② Structure(組織構造):組織の系統図に示される組織構造(指示命令系統・責任や権限の範囲などを含む)
③ System(システム):採用・育成・評価・報酬の仕組み、意思決定のプロセス、情報の流れ、会計制度など
ソフトの4S
④ Shared value(共通の価値観):従業員が共通認識している価値観、企業理念や組織目標など
⑤ Staff(人材):従業員一人一人の人材の能力・配置
⑥ Style(スタイル):企業独自の社風、組織文化。暗黙の行動規範
⑦ Skill(スキル):組織全体に備わっている他社よりも優れている技術(販売力、技術力、マーケティング力など)
マッキンゼー7Sの中心はShared value(共通価値観)です。まず始めに共通の価値観を決めてから他の6つの要素を決定するようにします。
これらの7つの要素はそれぞれ独立しているのではなくそれぞれに影響を与えています。そのため一つの要素を変更すれば他の要素に影響が出ないかも、分析しなければいけません。
実行する際に、特に注意すべき点
このうち、ソフトの4つは、価値観が絡む要素であるだけに慣性が働き、強制的にまたは短時間に変更することは難しいとされています。一方、ハードの3つは、変えようとする意思やプランがあれば、変更することが可能です。手をつけやすいという理由から、結果として、ハードをしっかり設計し、運用すればうまくいくと考えがちですが、重要なことは、ハードとソフトが融合し、なおかつ整合しているということになります。よって、④から着手し、⑤~⑦の変化スピードを踏まえて、①~③を進めていくことで、上手く機能する形になります。
これからの時代に求められる組織とは?
これからの時代の組織づくりにおいて、重要なのはシェアド・リーダーシップ組織をつくることだと考えます。
シェアド・リーダーシップ組織とは
「全員がリーダーシップを発揮している組織」を指します。
具体的には、職場のメンバーそれぞれが必要な時に必要なリーダーシップを発揮し、誰かがリーダーシップを発揮しているときには、他のメンバーはフォロワーシップに徹するといった有機的に柔軟に動いていくような職場の状態です。
従来の組織では、管理職などの1人のリーダーが、指示・命令などのリーダーシップを発揮し、メンバーが従うことで組織を運営していましたが、過去の成功体験が通用しないどころか誰も正解を知らないVUCAの時代には、既存のマネジメントスタイルだけでは限界が来ています。
シェアド・リーダーシップ組織がつくりあげると、職場や組織への参画意識が芽生え、個々の強みや専門性が発揮でき、現場で様々な判断して行動することに繋がります。
その組織をつくるために、『パーソナリティ・ベース・リーダーシップを磨くこと』と『全体視点の強化』が不可欠です。
パーソナリティ・ベース・リーダーシップとは
個々人が自分の性格や能力上の強みを活かしたリーダーシップを発揮することです。個人の強みや特性は人それぞれ異なるので、それを見出だし、生かしていくことが不可欠です。そのために、まずは従業員を早期に自律(周囲からの要請や期待を反映した責任のある行動ができる)を意識付けし、行動してもらうことから始めましょう。
しかしながら、自分の強みを活かすことができるのであれば、何をやってもいいというわけではありません。現場の仕事の視点だけではなく、自分の所属しているチーム全体や職場全体の視点、社会全体の視点を持つことで、組織や会社にマッチしないリーダーシップを発揮することはないはずです。だからこそ、全体視点を持つことは自分の強み・特性を活かしたリーダーシップを発揮する上で重要なのです。組織では、できる限り情報をオープンにして、各自が判断できる材料を提示しながらフラットに対話して取り組みを行うことがこれからの時代に不可欠になってくると考えます。
シェアド・リーダーシップ組織構築に向けたステップ
シェアド・リーダーシップ組織への変化は一朝一夕では行きません。
あくまでも段階があります。
第一段階:形成期(リーダー依存)・・・様子見、個人主義、関係性の希薄
第二段階:混乱期(リーダー少数)・・・自己主張、摩擦と衝突、同調圧力
第三段階:統一期(リーダー複数)・・・ルールや役割の明確化、協調性やリレーション形成
第四段階:成熟期(全員リーダー)・・・強固な信頼関係や協力風土、協働的問題解決
経営者やリーダーの強い信念、志で周りの人を引っ張っていくような時代から、一人ひとりが信念(美学)を持ち、それぞれを尊重することが大切な時代に変わってきています。
従業員全員が自律性を育み、主体性を発揮できる仕組みが必要です。具体的な一歩としては、従業員に分かりやすく現状を把握してもらう取り組みがスタートです。その上で、第三段階を目指して進めていきながら、シェアド・リーダーシップ組織を構築していくことが、これからの組織には必要不可欠になります。
誰もがリーダーシップを発揮する組織づくりを私たちは実現に向けて動かしております。
それが、働く人ひとりひとりがイキイキと働くことに繋がり、組織も会社も日本も元気につながると考えております。