こんにちは、シェイクの新井です。
突然ですが皆さんは「人材育成」や「研修」と聞いて、何をイメージされますか?
新人研修、コミュニケーション研修、管理職研修など、ある特定の対象層に対して、必要なスキルを教えるもの、というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
この記事の「人材育成のポイント」というタイトルから「スキルの伸ばし方」を知ることを期待してお読みいただいている方もいらっしゃるかもしれません。
一方で、シェイクでは根底にあるマインド・スタンスの変化や、成長を促すための場づくりを大切にして、サービス提供をしております。
この記事では、
・そもそも人材育成とは?
・人材育成が必要な理由とは?
といった、基本的な考えをご紹介したうえで、後半ではシェイクが人材育成で大切にしていることについてもお伝えしていきたいと思います。
ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
そもそも人材育成の定義とは
企業における人材育成とは、一言で言うと、「企業に貢献できる人材を育成すること」です。社員一人ひとりが持つ可能性を伸ばし、そのスキルや知識を高め、より高いパフォーマンスを発揮できるように支援することを目指します。
人材育成の手法としては、大きく「OJT(On the Job Training)」、「Off-JT(Off the Job Training)」、「SD(Self Development)」の3つに分類されます。
(1)OJT(On the Job Training)
OJTは、現場で上司や先輩が実際の業務をしながら、必要な知識・技能を指導していくトレーニング方法です。
(2)Off-JT(Off the Job Training)
Off-JTは、一時的に職場を離れて能力開発に取り組む方法です。指導する側の育成スキルによるばらつきなく、体系的に業務に必要な知識やスキルを身につけられる点は、Off-JTの強みです。
(3)SD(Self Development)
SDは、自己啓発のことです。具体的には、読書や資格取得など社員自らが知識やスキルの習得・向上を図る活動です。
人材育成が必要な理由
人材が成長し、業務におけるパフォーマンスが高まることで、企業業績の向上が期待できることから、人材育成は、企業の成長にとって必要不可欠なものと言えます。
(1)企業の競争力を高める
労働人口の減少、テクノロジーの進化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。その中で、企業の競争力を左右する要素として注目されているのが「人材」です。「ヒト」「モノ」「カネ」「時間」といったあらゆる経営資源の中で、資源そのものが成長できるのは「ヒト」のみです。人材育成を通じて、社員が成長することで生産性が高まったり、変化に対応していける力が高まったりすることにつながります。また、社員本人のモチベーションの維持・向上にもつながります。
(2)優秀な人材の確保と定着につながる
少子高齢化に伴い、日本の労働人口は減少傾向にあり、企業にとって優秀な人材の確保は重要な課題となっています。限られた資源である人材を活かすためには、人材育成による知識やスキルの向上を図り、生産性を高めていく必要があります。また、企業が優秀な人材を獲得・定着させるためには、魅力的な報酬や福利厚生だけでなく、成長できる環境を提供することも重要です。成長機会が提供されない企業には、優秀な人材は集まらないからです。
人材育成の目的
育成対象に応じて、当然育成すべき内容は変わってきます。
育成対象とは、例えば新入社員、中堅社員、管理職などを指し、それぞれ人材育成における目的は異なります。
一般的に新入社員を対象とする人材育成は、専門性よりも社会人としての基礎を身に付けるということに主眼が置かれます。
これが中堅社員になると、一定の業務遂行スキルを身に着けている前提で、中核メンバーとしてリーダーシップを発揮することが目的になります。
管理職の場合は、組織のマネジメントや部下育成、評価などが適切に行えるようになることが目的になります。
理解しておきたい理論、フレームワーク
(1)7:2:1の法則
7:2:2の法則は、アメリカのロミンガー社による優れたビジネスリーダーの経験に関する調査から導き出された法則で、学習の7割は経験を通じて、2割は他者との交流を通じて、1割は研修を通じて得られるという考え方です。
OJTやメンタリング、研修をバランスよく組み合わせることで、効果的な人材育成を考えることが重要です。
(2)コルブの経験学習モデル
デイヴィット・コルブが提唱した理論で、人がいかにして経験から学び、成長していくのかをプロセス化したものです。人材育成人事の分野においても、社員の育成や研修プログラムの設計に広く活用されています。
①Concrete Experience(具体的経験)
②Reflective observation(省察的観察)
③Abstract Conceptualization(抽象概念化)
④Active Experimentation(能動的実験)
(3)ADDIEモデル
以下の、5つのプロセスの頭文字を取ったフレームワークで、この5つのプロセスに沿って研修を組み立て実践し、継続的に見直しながらブラッシュアップすることで効果的な人材育成施策を実施することができます。
①Analyze(分析)
②Design(設計)
③Develop(開発)
④Implement(実施)
⑤Evaluate(評価)
(3)カークパトリック・モデル
カークパトリック・モデルは、研修や教育プログラムの効果を分析・評価するためのフレームワークです。
反応(Reaction)
- 研修に対する受講者の満足度や、研修内容への関心の度合いなどを評価します。
- アンケート調査や、研修中の参加度などを指標に評価します。
(例)研修の満足度はどうか、講師の説明は分かりやすかったかなど
学習(Learning)
- 研修を通じて、受講者がどれだけの知識やスキルを習得したかを評価します。
- テストや、ロールプレイングなど、具体的な行動観察を通して評価します。
(例)研修で学んだことを仕事で活かせるか、新しい知識を身につけることができたかなど
行動(Behavior)
- 研修で学んだことを、実際の仕事でどれだけ活用しているかを評価します。
- 上司や同僚からのフィードバック、業務データの分析などを通して評価します。
(例)研修で学んだ技術を業務に活用しているか、職場での行動は変わったかなど
結果(Results)
- 研修が組織全体の目標達成に、どれほどの貢献をしたかを評価します。
- 売上向上、コスト削減、顧客満足度向上など、具体的な数値で評価します。
(例)研修によって、部門の売上目標を達成できたか、顧客からのクレームが減少したかなど
人材育成を行ううえでの注意点
(1)目的・目標を定めて取り組む
人材育成は、手段であり、育成施策を検討するにあたっては、目的を定めて実施することが大切です。例えば、研修を実施するにしても、研修の実施が目的にならないように注意する必要があります。ただ研修やトレーニングを行うだけではなく、結果として、どのような行動変容を期待するのか、どのようなスキルを身に着けてもらいたいのか、そのスキルを活用してどのような行動を職場で取れるとよいのか、など、具体的にイメージすることが大切です。
(2) 成長に対する当事者意識を醸成する
どれだけ素晴らしい育成プログラムを用意したとしても、受け手の社員自身の意欲が低いままだと期待する結果は得られません。社員が自由に学びたいプログラムを選択して受講できるように選択式のプログラムを用意したものの、受講する人がいない、といった話はよくあります。何を学び、何を身につけてもらうか、も大事ですが、それと同時に、いかに社員1人ひとりが自律的に学ぶ意欲を醸成するかが大切です。そのためには、社員自身が自らのキャリアや成長に対する当事者意識を持てるように支援していく必要があります。
人材育成でシェイクが大切にしていること
(1)スキル・知識のインプットだけではなく、マインド・スタンスの変化に注力する
どれだけスキル・知識をインプットしても、根底にあるマインド・スタンスが変わらなければ、本質的に行動は変わりません。マインド・スタンスとは、意識や姿勢のことであり、過去の経験や環境によって形成されたものの見方や考え方のことを指します。例えば、後ろ向きな姿勢でいくら新しいスキルを学んでも、それを活かし、自分の行動を変えようとするモチベーションは生まれません。
一方で、マインド・スタンスを変化させることは簡単なことではありません。長年慣れ親しんだ考え方や信念は、必要に迫られるか、よほどのインパクトがない限り、簡単に変わることはありません。
シェイクは、内省、深い気づきを促す研修設計により、自分のものの見方や考え方を見つめ直す機会を意図的につくることで、マインド・スタンスに変化を生み出すことにこだわっています。
例えば、自分自身がとらわれている「固定観念・価値観」に気づく、自己認識と他者認識の違い(やっている/できている「つもり」の自分)に気づく、自分が見えていない視点や観点に気づく、などです。敢えて「ゆらぎ」をつくることで、自分自身のあり方を見つめ直すスイッチが入るのです。
(2)人は実践と経験を通じて成長する
研修の実施は人材育成の一環として有効ですが、研修だけで人は成長するものではありません。職場での実践・経験を経て成長していくものであると考えています。またその過程における周囲の人とのかかわり合いや周囲からの支援によっても大きな影響を受けます。
例えば、研修で大事なことを学び、早速職場でチャレンジしてみようと意気込んで職場に帰ったとしても、「そんなことよりも、まずは目の前の仕事をしっかりやりなさい」と言われてしまったらどうでしょうか。おそらく本人は期待されていないのだと感じて、チャレンジすることをやめてしまうでしょう。
また、チャレンジしたことがすぐに上手くいくとは限りません。むしろ最初は思い通りにいかないことの方が多いでしょう。「分かる」ことと「できる」ことは、まったく別物だからです。そんな時に、周囲に実践を支援してくれる人が誰もいなかったらどうでしょうか。「難しいな」で終わってしまうこともあるかもしれません。
それではせっかく研修をやって良い気づき・学びを得ていたとしても、非常に勿体ない結果になってしまいます。
従って、育成施策を考える際には、研修後の行動変容に向けて、研修当日のプログラム内容だけではなく、研修目的や期待の伝達や課題設定といった研修前の仕掛け、研修後に気づき・学びを実践するための実践機会の提供や実践のフォローといった仕掛けも含めたトータルの施策設計が必要であると考えます。そういった意味では、人事部や研修室で完結するものではなく、職場の上司との連携も大変重要な要素であると考えます。
(3)育成される側の立場に立って考える
私たちが向き合うのは人間であり、すべての人が同じように成長するわけではありません。対象となる社員1人ひとりにはそれぞれに置かれている状況や取り組んでいる業務内容も異なります。意欲の高い時期もあれば、さまざまな事情でなかなか意欲が高まらない時期もあるでしょう。私たちは、育成する側の論理だけではなく、育成される側の立場・状況も理解しておく必要があります。
また、私たちは、他人を直接的に変えることはできません。こうしなさいと言って変わるものではなく、本来的に人は、当人が変わりたいと思ったときに変わるものです。そういったことも念頭に置いておく必要があります。人材育成にかかわる側としては、一方的な押しつけになっていないかと常に自問自答する姿勢が求められるでしょう。
何がきっかけで人の能力が開花するかは、わかりません。想定外の出来事や経験が人生のターニングポイントになることもあります。育成にかかわる側の人たちには、「可能性」を信じ、長い目で見て支援していく心構えが必要であると同時に、1人ひとりに応じた育成施策の提供が必要であると考えます。
まとめ
人材育成は、社員と組織の成長において重要なものであり、長期的な取り組みです。
一方で、人材育成に正解はありません。他社の取り組みが自社にも上手くはまるとも
限りません。
何を目指すか、その実現のためにどのような施策をどう組み合わせて実施するかなど
企画サイドの取り組み方や工夫次第で、その効果は大きく異なってきます。
トレンドに左右されることなく、本当に自社に必要な人材育成とは何かを吟味したうえで、
継続的に実践と検証を繰り返しながら、より自社に合った人材育成施策にブラッシュアップしていくことが重要です。