窪木 明子様
経営管理グループ 人財チーム 副部長
導入階層
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窪木様
弊社はIT企業であり、多くがエンジニア職となります。職種柄、技術面での成果や実績が評価されやすい傾向にあり、そのため、個人の成長や育成においては、エンジニアとしてのスキル獲得に意識が偏りがちでした。実際の現場でもチームで働くよりも個人で業務を遂行するような環境も一部では見られ、リーダー職に昇進しても、チームをまとめられず、メンバーの育成が難しいという課題が生じていました。
窪木様
最初は中堅社員以上のリーダー層に管理職向けの研修を実施しましたが、その際に、管理職がリーダーシップを概念的に理解しても、それを現場での具体的な行動に結びつけることが難しいという新たな課題が見えてきました。頭ではわかっていても、実際にチームでは影響力が発揮できない状況があったと思います。
そこで、管理職になる前の若年層から、周囲に影響力を発揮できる「人間力」の高いリーダーを育てていくことが必要だと考え、リーダーシップを開発する必要があると考えました。例えば、新入社員でも、日常的な行動、例えば挨拶をすることがリーダーシップ(影響力)の発揮だと伝え、影響力を高めることの重要性を教えています。
窪木様
弊社は1930年に電話部品の商社として創業しました。当時は、経営層が先頭に立ち、全国の専門学校を回りながら学生を採用していました。採用した学生の親代わりとして彼らを預かり、いくつかの寮に分かれて共同生活を送るなど、経営陣にとって従業員は家族のような存在で、若手メンバーにとって上司は親代わりであり、仕事を通じて、人としての人間力を育てる文化が育まれていったと思います。
また、電話が普及する時代、商社の機能だけでは、部品が不足するとお客様の要望に応えきれない。であれば、仕入れて販売するだけではなく、自ら製造するべきだと判断し、製造業に業態を変化させていきました。「ないものや今後必要になるものを作る」という製造業の考え方です。これらの歴史の中で、現在のITのプロフェッショナル集団としての「モノづくり」の思想と技術的だけではない「この人と仕事をしたい」と思って頂ける人間関係を大切にする文化が今でも続いています。
窪木様
1年目からおよそ8年目あたりまでの段階的なプログラムを実施していますが、我々の考えるリーダーシップのあるべき姿のようなものを伝えるのではなく、受講者自身がリーダーシップについて自分で考え、他者の意見を交えながら、相互に学び、それを実践できるようにすることを重視しています。
また、プログラムもすでにあるものをただ導入するのではなく、弊社の状況や受講者に合わせて構成いただいています。私は、受講者の参加意欲も重視しており、当日どれだけ本人たちが有効な時間を過ごしたと思えるか?次も受けたいと思えるか?も大事だと思っています。弊社の意見ややりたいことをプログラムに落とし込み、また当日の受講者の様子をふまえながら、受講者にとって意味のある、成長につながるプログラムに向けて改善し、シェイク様と一緒に作り上げている感覚があります。
(補足)本施策の3つポイント
①成人発達理論の垂直の成長を伸ばすことを目的においたリーダーシップ開発を実践
1年目:相手視点の獲得からスタート
2年目:長期的な視点で自分を捉え、キャリアイメージを描く
3年目:成人発達理論の垂直(タテ:知性・意識・器の成長)と水平(ヨコ:知識・スキル)の成長を理解する
4年目:垂直(タテ)の成長を促し、本人らしいリーダーシップを発揮できるよう自己認知する
5年目以降:リーダーとしての具体的なスキルを学びながら、他者のリーダーシップを引き出すかかわりやチームづくりについて考える
②内省できる仕組みと持論化支援
・各3時間3回オンラインの設計なので、振り返りと持論化が定着
・概念理解にとどまらず、自分事として社会人としてのあり方を持論化する仕組み
③多様性、人との違いを受け入れて学ぶ
・階層別に分かれているが、中途採用もいるのでこれまでキャリアの違いや価値観の違う人と対話し学び合いあえる
・人によって定義が違う曖昧なものを同じ階層のメンバーで考え、共通認識を持つ
三浦
研修ごとに職場実践をしながら、また研修を繰り返すことで、チームのあり方やリーダーシップの発揮の仕方を考え、実践し、振り返ることで持論化されているのが特徴的ですね。自社で働くことに対して受け身になるのではなく、若手のうちから自分なりにリーダーシップを発揮できる場面や領域を言語化し、実践し、それが積み上がっていると感じます。
例えば、印象的だったのは、「後輩の話を聞くことはリーダーシップじゃない」と話していた方が、3回の研修の中でだんだんとその認知が変わってきたエピソードです。後輩の悩みを聞いた際に、後輩から「すっきりしました。自分の話したいことが、あなただから話せました」と言われたらしく、最後の研修では、これもリーダーシップなのかと自分で気づけたと話していました。いわゆる一般的な考え方の理解ではなくて、私たちが伝えたい人間力とは何かとか、リーダーシップとは何かというものが、社員1人ひとりの経験に照らし合わされ、理解に落とし込まれていく感覚がありました。窪木様はどのような変化を感じていらっしゃいますか?
窪木様
このプログラムを通じて効果の一つとして現れたのは、若手・中堅社員が描く将来の会社像の変化でした。創立100周年に向けて、会社をどう進化させるとよいかというプロジェクトが社内で動いており、そのチームで動画を作成したところ、「社員1人ひとりが責任を持ちつつ、そのチームを大事にするリーダーがいて、みんなが助け合って仕事をしている様子」がこれからの信興テクノミストとして描かれていました。売上や取引拡大だけではなく、チームの協力と成長に焦点が当てられていました。この変化の背景には研修プログラムでのディスカッションや相互作用を通じて培われた共通認識があると思います。
この理想の組織像は夢物語ではないからこそ、組織全体がこのビジョンを共有しながら、ビジョンから現実の数字目標や取引拡大の動機づけがなされ、自分たちの日々の活動がこの理想像に向かっているものイメージされるような、そういう認識につながっているように感じます。
窪木様
OJT(職場での育成)や研修はもちろん重要ですが、社員1人ひとり自分なりに言語化し、自分らしいリーダーシップ発揮をしていくことが大切なのだととらえています。
また、別の観点では、キャリア自律が当社において非常に重要なテーマになっています。もともと取り組んできたことでもあるのですが、AIや新技術の進展が著しい中で、従業員が自分のキャリアを主体的に形成することが求められています。私は、個々人がどのようなエンジニアになりたいのか?AIではできない、人間に求められる仕事をするために「自分の強みを理解し、それを伸ばし、最大限発揮していくために組織はどういうサポートが必要なのか?」と常々考える必要があると思っています。そのため、日常的に将来のキャリアを考えるような取り組みや仕組みのようなものを今後は考えていきたいと思っています。
三浦
研修実施だけでなく、個人の言語化や成長といった側面から個人の成長を支えていらっしゃいますね。
若手メンバーがリーダーになったときには、シェアド・リーダーシップ型組織が実現されるのはないでしょうか。
本日は私が知らなかった貴社の歴史など大変貴重なお話を伺うことができました。お時間いただき、ありがとうございました。
担当コンサルタントからのコメント
企業情報
社名
株式会社 信興テクノミスト
事業内容
1930年に電話部品の商社として創業。「常にお客さまの期待を超えるサービスを提供する ITトータルソリューションカンパニーであり続ける」をビジョンとして掲げている。現在は、システム構築・開発・運用、Webサイトのセキュリティ診断などの製品・サービス提供、「fusetter」などのコンシューマー事業を手掛ける。
URL
https://www.shinko-1930.co.jp/