コラム

行動を促す一歩目の設計

皆さん、こんにちは。シェイクの吉田です。

最近、「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」(金間大介著 東洋経済)という本を読んで、衝撃を受けました。
衝撃を受けた内容は、例えば、大学の授業で人前で褒められるとモチベーションが落ちるというもので、その理由は二つあげられていました。
1.自分に自信がないこととのギャップが生まれ、褒められると、ダメな自分に対する大きなプレッシャーとなるため
2.他人の中の自分像が変化し、目立つことで、自分という存在の印象が強くなることを嫌がるため

現在の大学生が最も嫌だという講義は「当てられる」講義であり、彼らは横並びを大切にし、目立たないことを重要とする、とのことです。「いい子症候群」「横並び主義」がキーワードだと感じました。

さて、最近、人材育成の現場で、二つ、気になる出来事がありました。
一つは新人研修において、もう一つは、マネジャー研修の職場実践での出来事です。
この二つの出来事をご紹介させていただきながら、人材育成や職場での育成のヒントを探ってみたいと思います。

一つ目は、新入社員研修において、自発的に相互に貢献する活動が増え、学び合うリーダーシップが生まれた事例です。

横並び主義で、他者の目を気にする新入社員ですから、自分から発言することや、自ら他者に働きかけるリーダーシップ行動はリスクが高いことだと思います。
それが新入社員研修にある仕掛けを組み入れることで、自発的な学びの場になりました。

組み入れた仕掛けは、
①一日の終わりに、仲間の良い行動を一つ、スプレッドシートに記入すること。
②一週間に一度、グループで目標設定と振り返りの時間を設けること

の二つです。

この二つの仕掛けを盛り込んだことで、新入社員が、自発的に行動をし始め、相互に学び合う場になっていきました。

このような変化が起きた理由は、
①どのような行動を起こせばいいかわからない
②行動をしたときに、周囲から変な目で見られるのではないか

という二つの不安を解消できる打ち手だからだと思います。

二つ目の出来事は、マネジャーを対象とした3か月間の実践プログラムを実施した時のことです。一般的に、マネジャー研修で、気づきや学びを得ても、職場での行動が変わらないことが多くあります。これまでの成功体験や、現場での忙しさが、行動変容を妨げるためです。

ところが、このプログラムにおいては、最終的には殆どの人が実践して学ぶという結果になりました。
組み入れた仕掛けは、1カ月ごとに振り返りセッションを設け、実践した人の効果や職場の変化を共有するということです。

これを引き起こしたのは、「みんなもやっているから、自分もやろう」というマインドだと感じました。気づきを得て、有効だと感じたから実践するという人もいますが、「周りの人もやっているから実践する」という行動をとる人が多いということです。

船が沈没しそうになり、海に人を飛び込ませなければいけないとき、何と言えば人が海に飛び込むか、という場面において次のようなジョークがあります。
アメリカ人に向けて「さあ、ジャンプしよう。そしてヒーローになるのだ」
ドイツ人に向けて「ジャンプすることがこの船のルールなのだ」
イタリア人に向けて「今ジャンプすれば、女性のハートはあなたのものだ」
日本人に向けて「周りを見てみなさい。皆ジャンプしているぞ」

日本における同調圧力を揶揄するジョークです。

人材育成に転用するならば、特に日本においては、

  • 他者からどう見られるかという不安を解消する
  • 周囲もやっているから自分もやる

ということを作り出すことが重要だと思います。

周囲がやっているから、という理由で始めるのは、本質的なアプローチではないと感じるかもしれません。でも、人が学びを得るのは、行動を起こした後であって、行動した多くの人は、経験学習から学びを得ています

大事なのは、行動を促す一歩目をどう設計するか。

そう考えたときに、以下の二つのアプローチが重要だと感じます

①例示を示す
②いいね、を生み出す

11月のHRカンファレンスでは、こうした考察から得られた知見を新人育成にどのように生かして、年間を通した育成を後押ししていくのか?を講演する予定となっています。

そして、これは研修に限ることではないと感じています。
職場において、主体的な行動であふれる職場づくりにおいても、
具体的行動の例示と、よい行動を見つけて仲間同士で承認すること。
上司が承認するというよりは、仲間同士で承認することがポイントだと思われます。
上司の目だけではなく、仲間の目を気にしますから……。

人材育成を計画するにおいても、育成風土が高い職場づくりを推進するにおいても、この2つを仕組みとして組み入れることが出来ないか、検討してみる価値はあると思います。
いかがでしょうか?

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