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マネジメント

目を向けるべきは?

こんにちは。シェイクの池田です。

「お前はどっちを向いて、仕事をしているんだ?」

この言葉は、前職でお世話になった、ある営業課長の口癖でした。

この「どっち」という言葉が意味するものは、
「社内のルールや論理」と「社外(=お客様)」という2つの軸、どちらを優先するのかということです。

目標数字や社内の事務処理をこなすことばかりに囚われていた当時の私に対して、、
我々の給料はどこから生まれているのかよく考えながら仕事をしなさいという、課長の教えでした。

この言葉が、環境が変わった今となっても、仕事をする上での私のベースとなっています。

今回は、この営業課長Sさんのエピソードをご紹介させて頂ければと思います。

Sさんとの縁は、私が在籍していた支店に、
Sさんが営業担当者として異動してきたことが始まりでした。

当時は、業績の伸び悩み、慢性的な人手不足から、支店としても非常に苦しい状況でした。

そのような状況の中、
異動してきたSさんは、後輩の面倒見が良い兄貴肌で、周囲を引っ張る力強いリーダーシップも兼ね備えていました。
実際、他の支店でも数多くの実績を残してきたことから、上司も期待を寄せていました。
まさに、支店に「救世主」が現れたと、誰もが思いました。

そんなSさんが異動してきて、約1年ほど経ったある日のことでした。
人事発令で、Sさんの「課長への昇進」が発表されました。

その日を境に課長となったSさんは、
より一層熱心にメンバーに関わるようになりました。
また、新しい施策を次々と打ち出し、
案件の掘り起こしも自らフロントに立って積極的に推進しました。

「俺って、偉そうなこと言っているけど、実は同期と比べて出世遅れてんだぜ。まあ色々あってさ・・・。
 推薦してくれた上司には、本当に感謝だよ。それに、お前らにごちゃごちゃ言うのも、
 俺みたいに同期に遅れをとってほしくないんだよ。」

そんな熱い想いをお酒の席で、Sさんはよく話してくれました。
仕事も出来て、後輩思いのSさんが、営業課を率いる課長となったことで、
支店の業績回復を目指すべく、下期に向けて営業課全員が意気込んでいました。

しかし、結果は・・・赤字でした。

これは60年近く続いてきた支店の長い歴史の中でも、過去最低レベルの業績でした。

もちろん良い話もありました。

業績の低迷が続く中、
Sさんが、お客様とのちょっとしたキッカケから圧倒的なスピードと交渉力をもって、
支店長・本部・役員を動かし、支店史上最大級の案件を受注しました。

それでも当初の目標ラインまでは程遠い、赤字でした。

この赤字は、様々な要因が複雑に絡み合った結果であり、明確な原因は分かりません。

ただ今改めて振り返ってみると、
営業課が、チームとして機能していなかったことが大きいような気がしています。

具体的には、

  • 頻繁な異動、配置転換、引き継ぎにメンバーが対応しきれず疲弊していた
  • メンバーの日々の取り組み・行動に対する、上席者の承認がなかった
  • Sさんのやり方やポリシーを、メンバーに押し付ける
  • 上席者から、成果が上がらない「ダメなチーム」というレッテルを貼られていた
  • 上席者が、メンバーを信頼せず、日々のノルマや行動を徹底的に管理していた

結果として、Sさんを含む”上席者”と”メンバー”との間に、徐々に「溝」が生まれました。
表面的には見えないこの「溝」が、チームとしてのパフォーマンスを下げた大きな要因だったように思います。

そして、この業界に身を置くようになった今、
当時のSさんや支店のメンバーに感じていた事、
どうしたらチームがうまく機能したのか、私なりの考えを次のように整理しました。

<Sさんに対して感じていたこと>

  • 日々の目標数字や行動を細やかに管理され、メンバーは嫌気がさしていた。一方で、経験豊富なSさんだからこそ、どうやったらミッションを達成できるか、具体的なアドバイスを自分からもらいに行くべきだった。
  • 成果を誇示しなくとも、Sさんの仕事ぶりは誰もが認めていた。メンバーにとっては、”ほら、俺みたいにサクっとやってくれよ”っていう無言のプレッシャーにしか思えなかった。
    一方で、Sさんが成果を生み出したプロセスや、他のお客様にも展開できるようなナレッジをチームとして蓄積しようと提案すればよかったができなかった。
  • メンバーは、意見を”持っていない”のはでなく、”言わない”だけだった。的外れなことを言って、Sさんに突っ込まれる方が面倒だと思っていた。
    お互いに学び合う姿勢が欠けていた。

<上席者含む支店メンバー全員で共有したかったこと>

  • 私たちのチームとしての「存在理由」は何か。
  • 私たちは、「何を実現する」、「何を強みとした」チームだったのか。
  • 経営が掲げた方針や、本部から割り当てられた目標数字ではなく、私たちのチームならではの「目指すべき未来」は、何だったのか。

そして何より、当時のSさんやチームにこれらを言い出すことができなかったことが、私の一番の後悔です。

当時、「成果を出している」Sさんに対して、
「成果を出していない」私が意見を言うことに、心理的なブレーキがありました。
Sさんがやることは、全て「正解」なんだと。

しかし、私は支店の業績悪化を目の当たりにして、
「圧倒的な成果をあげられる人 ≠ チームの成果を最大化できる人」であること、
裏を返せば、管理職の方々の関わり方1つで、
メンバーのモチベーションや行動は大きく変わることを実感しました。

もちろんメンバーは、管理職の方々に気を遣ってもらいたいわけではないですし、
管理職の方々の忙しさや責任の大きさは、百も承知です。

 「最近のメンバーの調子は、どうですか?」

 「メンバーの強みや、今後の目標を理解していますか?」

 「メンバーは、あなたの示す未来に共感して付いてきていますか?」

多忙な業務の中でも、上記のようにメンバーに少し”目を向ける”だけでも、
チームの現状が見えてくるのではないでしょうか。

私自身も、社内外問わず、より良い組織・チームを生み出すことを追求し続け、
お客様の更なる発展に貢献していきたいと思います。

この記事を書いた人
池田 裕亮
組織・人の課題解決において、絶対的な正解がないからこそ、お客様の本質的な課題解決を共に考え抜く伴走者でありたいと思います。
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