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シェアド・リーダーシップとは?

皆さん、こんにちは。シェイクの吉田です。

立教大学の石川淳教授が書籍を出版されたのを皮切りに、近年、早稲田大学の入山章栄教授や立教大学の中原淳教授も注目しているのがシェアド・リーダーシップです。今回は、シェアド・リーダーシップについて詳しくみていきたいと思います。

従来の組織では、管理職などのリーダーが、指示・命令などのリーダーシップを発揮し、メンバーが従うことで組織を運営しており、「リーダーは組織に1人いればいい」と考えます。それに対して、シェアド・リーダーシップとは、「全員がリーダーシップを発揮している組織の状態」を指します。

「船頭多くして船山に上る」ということわざがあるように、全員がリーダーシップを発揮すると組織がバラバラになってしまうのではないか、と懸念する人がいますが、それはリーダーシップの概念が理解されていないことから生じる誤解です。

船が山に上ってしまう船頭は、リーダーシップを発揮しているのではなく、自己中心的に自分の意見を押し通そうとしているのではないでしょうか。リーダーシップとは、目的に向けてポジティブな影響力を発揮することですから、船の目的地を踏まえたうえで、全員が意見を出し合い、目的地に着けるように合意していけば、船は山に上ることはありません。目的を達成することよりも自分の意見を押し通そうとする人は、リーダーシップを発揮しているのではなく、単にわがままを言っているだけです。

リーダー1人が、全てのメンバーに指示命令をして、動機付け、1on1をして、問題解決をしながら運営される組織と、組織の進むべき方向性を理解した全員が、それぞれの強みを活かした影響力を発揮し、相互に高め合いながら、問題解決をする組織では、どちらがパフォーマンスが高くなるでしょうか? 明らかに後者の組織のパフォーマンスが高くなります。このことは、様々な調査で立証されており、特に変化の激しい環境になるほど、パフォーマンスに差が出ます。この後者の組織がシェアド・リーダーシップ型の組織です。

シェアド・リーダーシップが求められる2つの理由

なぜ、今、シェアド・リーダーシップが求められるのか、詳しく見ていきます。

1つ目の理由は、シェアド・リーダーシップは新たな知を生み出し、組織のパフォーマンスを高めるからです。シェアド・リーダーシップは、「リーダー→フォロワー」という垂直的な関係ではなく、それぞれのメンバーが他のメンバーに影響を与えあう「水平関係」のリーダーシップと言われています。

「新しい知は、既存の知と既存の知の新しい組み合わせ」から生まれるため、組織内のメンバーの知の交換が促進される「水平関係」のシェアド・リーダーシップ型組織が、新たな価値を生み出すのです(早稲田大学 入山章栄教授「世界標準の経営理論」参照)。特に「知識ビジネス産業」において、シェアド・リーダーシップは極めて重要と言われている理由がここにあります。

新たな知や、イノベーションというと大きなことのように聞こえますが、現場での問題解決や、お客様への柔軟な提案、日常業務の改善や工夫なども、現場主導で生まれやすくなってくるのです。

2つ目の理由は、人が成長し、やりがいが向上するためです。人的資本の開示が一般的になり、エンゲージメントサーベイを実施する企業も多くなりました。エンゲージメントスコアをKPIに設定しているものの、どうすれば向上するか、打ち手が見つかっていない組織が多くあります。

現在、多くのマネジャーが、自身のプレーヤー業務をしながら、組織業績の向上、イノベーション、職場の問題解決、部下育成、キャリア支援、労務・コンプライアンス管理など多くの仕事に忙殺されています。「もっと、顧客に目を向けたい。もっとメンバーの成長に向き合いたい」と思っても、その余裕もなく、価値を生み出す喜びや部下が成長する喜びを感じることが出来ていません。組織マネジメントの責任を一手に担って苦しい思いをしている人が多くいます。

メンバーも、「この組織で働き続けていいのだろうか?」とキャリア不安を感じている人が多数です。やりたいことが明確ではないものの、やりがいを感じ、成長する環境を求め、転職を視野に入れながら働いている人が多いのではないでしょうか?

シェアド・リーダーシップ型組織は、自分の強みを活かして組織や顧客に貢献できる組織です。言われたことをやるだけではなく、自らリーダーシップを発揮していくことが求められます。リーダーシップ発揮を通じて、貢献実感や成長実感を持ちやすくなり、組織に対する当事者意識が高まり、組織を自分の居場所にしていくことができる組織形態と言えます。

シェアド・リーダーシップを実現するポイント

私自身、人材開発・組織開発に携わって20年以上、経営者として15年以上、数多くの失敗もしながら、この組織作りに取り組んできました。
その中で、見えてきたシェアド・リーダーシップ型の組織を実現するためのポイントについて押さえておきましょう。

仕組み、マネジメント、メンバーの3つの視点が必要になります。

シェアド・リーダーシップを実現する3つの仕組み

まずは、個々のメンバーがリーダーシップを発揮するための仕組みです。シェアド・リーダーシップの実現を全て、マネジャーに押し付けてはいけません。仕組みを会社として整えつつ、浸透の役割をマネジャーが担うことが求められます。
方向性を合わせる仕組み、軌道修正する仕組み、自律的に動ける仕組みの3つです。

1つ目は、方向性を合わせる仕組みで、目的地の共通認識を持つためのものです。シェアド・リーダーシップ型組織において、方向性の合意が出来ておらず、1人ひとりが好き勝手に動き出すとバラバラになります。企業で言えば、ビジョンや価値観に該当するもので、これは、マネジャーだけが責任を負うのではなく、会社として整える(経営が責任を持つ)ことが必要になります。

2つ目は、軌道修正の仕組みです。1人ひとりの行動が適したものであるか、軌道修正が必要か、相互にフィードバックをする仕組みが必要です。相互にフィードバックし合う組織文化を醸成すると言い換えてもいいかもしれません。従来の上位者から下位者に対する縦のフィードバックだけではなく、横同士、下位者から上位者へのフィードバックも求められます。

3つ目は、自律的に動ける仕組みです。これを実現するために必要なのは、情報の透明化です。階層によって情報格差があると、1人ひとりが自律的に動くことができません。特に、数字情報(業績やKPIの進捗など)に関する情報は透明化することです。組織においては、情報を隠されると思うと、指示を待つようになります。情報が開示されていることへの安心感を全員が持つことが必要です。

シェアド・リーダーシップを実現する管理職の役割

マネジャーは、場を整える、人を活かす、促進することが役割になります。
1つひとつ見ていきましょう。

まず、この組織がどこに向かい、何が大事にされる組織であるかをメンバーが理解していることが必要です。仕組みで整えた方向性をチームで組織方針として示され、マネジャーが自分の言葉でビジョンを語ることが求められます。

2つ目は人を活かすことです。具体的には、キャリア支援と強み発揮支援です。メンバーにやりたいことを聞いても、「よくわからない」と答える人が増えています。自分を動かす原動力が見つからない中で、自律的に動きリーダーシップを発揮することは難しいと言えます。日々の仕事における興味関心に関する対話を通じて、原動力となるWILLを一緒に見つけること、リーダーシップ発揮に繋がる強みを見出すことの支援をします。

3つ目は、行動を促進することです。リーダーシップを発揮していることを承認し、可視化し、評価することです。まずは、マネジャー自身がポジティブフィードバックを通じて、行動促進をしましょう。その上で、相互に行動を促進するためのフィードバックをしあえる状況にもっていくことが大事です。

実際に、管理職を対象にシェアド・リーダーシップ研修を実施させて頂いた際の事例もあります。研修を実施した際の管理職の方の感想や、その研修から見えたシェアド・リーダーシップの可能性についてまとめていますので、よろしければご参照ください。

シェアド・リーダーシップとは? 事例から見る3つの可能性
https://shake.co.jp/news/73367/

シェアド・リーダーシップを実現するメンバーの責任

メンバーは、全体を知る責任、自分を知る責任、自ら動く責任があります。

まずは、全体を知る責任です。これは、全社視点や組織視点、目標を知ることを主体的に行うことです。視野が狭いと、人は他責になりがちです。「分からないから自分事にできません」という状況を脱するためには、自ら知りに行くことがメンバーには求められます。上位方針や、組織全体に対する情報や背景を知りに行くことが大切です。

方針や目標を策定する際には、積極的に意見を言うことが大切ですが、決定した後に批判を繰り返す人がいます。一旦決まったことに対しては批判や文句を言わず、実行する当事者になることが求められます。

2つ目は、自分を知る責任です。これは、自分の強みとWILLの自覚です。リーダーシップを発揮するためには、自分の強みを知り、自分らしいリーダーシップを自覚することが第一歩です。自分でもリーダーシップを発揮できるのだという自己効力感を持ち、リーダーシップ発揮経験を積み重ねることで、自分のWILL(自分を動かす原動力)を明確にしていきます。

3つ目は、自ら機会を取りに行く責任です。これからの時代において、機会は、平等に与えられません。自ら動き、人に働きかける人に、機会が与えられます。もはや受け身の姿勢では、キャリアも築けないし、仕事も与えられないと心得た方がいいでしょう。

まとめ

ここまで、シェアド・リーダーシップを実現するためのポイントについて解説しましたが、シェアド・リーダーシップは、どの組織にも共通する決まった完成形がある訳ではありません。

事業内容によっても、所属する人によっても、最適な形は変わってくるでしょう。ここに紹介したことを全て実行しなくてもいいかもしれません。

ただ、程度の差はありますが、これからの変化の時代においては、少なからず、シェアド・リーダーシップ型組織の要素を取り入れ、実現に向けて動かしていくことは、欠かせません。

少しでも多くの組織がシェアド・リーダーシップ型組織になることを通じて、高いパフォーマンス向上と働く社員のイキイキに繋がることを願っています。

この記事を書いた人
吉田 実
誰もが持っている「無限の可能性」と「目が輝く権利」。一人でも多くの人の「イキイキ」のために、これからも邁進していきます!
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