こんにちは。シェイクの飯島です。
シェイクでのプロジェクト活動のノウハウは
お客様の育成プログラムの中で、
「職場で実践を通して学ぶ」目的でも活用されています。
今回も、あるお客様での事例をお伝えしていきたいと思います。
研修プログラム実施の背景 ~40代からのプロジェクト活動~
研修プログラムを実施する人事様は様々な課題を抱えています。
最近、耳にすることが多くなった課題のひとつのは
ミドル層や非管理職のシニア層のキャリア支援や人材活用です。
専門分野では十分に力を発揮し、与えられた仕事にまじめに取り組んでおり、会社としても重要な人材であると認識している一方で、
管理職としてマネジメントや育成を行っているわけでもなく、
変革・変化にも消極的な態度を示すことがあり、
組織からの期待とのずれが生じやすい世代です。
もちろん、皆さん一生懸命働いています。
しかし、長年働く中で培ってきた経験や考え方により
知らず知らずのうちに、自らの仕事の範囲を定義してしまったり、
自分の枠を決めてしまったりして、
本人は組織や仕事に対して主体性を発揮しているつもりだけれども
「現在期待されていること」とは乖離が生じてしまっている。
そのような方々に、
「会社や組織を作っているのは自分たちだという自覚を持ってほしい」
そんな期待をもって、シニア層のリーダーシップ開発を促した
研修&プロジェクト活動の事例をご紹介します。
「主体的に働いてほしい」で行動は促されるか?
さて、プログラムにおける期待は
「会社や組織を作っているのは自分たちだという自覚を持ってほしい」
でした。
しかし、40代を超える方々に今更「組織のために主体性を発揮しよう」
と言っても動機付けられる人は少ないのではないかと懸念されました。
そこで本プログラムはデザイン思考の考え方を基本にし
「困っている誰かの問題を解決しよう」
というテーマで研修を進めました。
キックオフの導入研修では、
会社のあるべき姿を描いて現状とのGAPを考え、といった
問題発見解決のフレームではなく、
ぺルソナを置き、その人の問題解決をどうしたらよいか?を考えています。
実際のプロジェクトも、本質的な解決でなくても
アジャイル的に動く中で、少しでもペルソナの困りごとが解決したらよい、
という趣旨で進めています。
抽象的なあるべき論ではなく、身近な課題や困りごとを扱ったことで
また、考えるよりも行動を推奨したことで、
受講者の方からは「ちょっと面白そう」「ぜひ取り組みたい」
という発言がありました。
プログラム開始時、もともと縦割り意識の強い企業で、
同じフロアで働いていても部署が異なると必要以上に仕事の話をしない、
部署の権限を越えるような行動は起こさない、
という状況にあったと聞きます。
そのため、現在の仕事の延長上では、
役割や権限によって行動にブレーキがかかります。
プログラム内では、通常の業務とは異なる、
それでいて具体的な施策がイメージしやすいものをテーマとして選び、
グループは部署や職種の異なるメンバーで組むことになりました。
キックオフの導入研修も和やかで和気あいあいとした雰囲気を醸成し、
緊張感や危機感を迫る、という場面をなるべく作らずに進行しました。
心理的安全性は誰が作り出すのか?
皆さんの職場では、仕事や組織に対する問題意識が自由に共有されたり、
新たなチャレンジやそれに伴う失敗が許容されているでしょうか?
今回の受講者の方は、一人一人は明るく前向きで、
本当に「良い方」と感じる方が多く、
仕事のやりがいや社会的意義を感じていて、
仕事に誇りを持って取り組んでいる方々です。
ただ、「会社」「職場」という視点で見ると、どこかあきらめ感が漂い、
自分たちにはチャレンジすることや役割を超えることは期待されていない、
そして、今までと異なる行動をしたら何か批判される、
「言ったもん負け(提案したら丸投げされる)」ととらえており、
チャレンジに対する心理的安全性が担保されていないと感じていました。
また、「心理的安全性」は、管理職や経営層が作るもの
という認識も受講者の方々にはあったように思います。
しかし、心理的安全性のない職場になっている一因は、
本来は彼らにもあるはずです。
管理職だけでなく、メンバーの中でもおそらく
チャレンジに対する支援や共感をしないことで知らず知らずのうちに
自分たちもその組織風土を生み出している存在になっています。
しかし、当初受講者の方々はそれは「管理職(=会社)」の責任であり、
自分たちには「できることはない」ととらえられていたと思います。
これらの認知が変わるきっかけがありました。
こちらの会社ではミーティングというと、すべて会議室内で行われ、
他部署のメンバーはそのミーティングの話を聞いたり、
様子を見る機会はありませんでした。
ミーティングは密室で行われることが常識だったのです。
しかし、プロジェクト活動実施中にあるグループが
社内のフリースペース(お茶や軽い食事をとるスペース)で笑いながら、
和気あいあいとプロジェクト活動に関するミーティングを実施しました。
このことは
「何か楽しそう」「あんな風にミーティングしていいんだ・・・」
と、社内メンバーから大きく注目されました。
プロジェクト活動への社内の注目・認知度を上げ、
他の社員の興味をひいた出来事でした。
そして、会社の会議に対する暗黙の文化に一石を投じたように感じます。
もちろんすべての会議がオープンになった、
というような劇的な変化はありません。
「こうした会議のあり方も許される」という認識を
社内に新たに作った点において、
大きなリーダーシップ発揮だと私たちは感じました。
ネガティブワードは使わない
本プロジェクト活動において、
私たちは経営者や部門長の方に3つお願いをしました。
「アイデアのダメ出しをしないこと」
「行動の否定をしないこと」
「良いことは良いと伝えること」
あるプロジェクトでは社員全員に一斉メールを送付する機会がありました。
そのメールに対して、社長が応援、承認の返信をしました。
社長は良い取り組みだと感じていることを伝えた返信だったのですが、
メール送信者は受け取った瞬間は叱られるのかと思った、
と感想を述べたそうです。
何か普段と異なる行動を移すとき、おそらく我々には
「誰かの気分を害したり、失礼があるのではないか?」
「注意されるのではないか?」
そうした不安を誰しもが抱えていることも多いでしょう。
社長の返信には、
該当のグループメンバーも非常に喜んだと聞いております。
社長による具体的な承認行動は、
彼らの新たな行動、やったことない行動への不安を払しょくし、
支援されているという感覚を得るのに、
大きな役割を果たしていたと感じます。
我々はあるべき姿を高く設定すればするほど、
GAPを感じるとそこに気を取られます。
これをGAPアプローチといいます。
プロジェクト活動で大事なのは、GAPアプローチの視点だけでなく、
あるべき姿に向けて「もっとこういうこともできるのでは?」
「こうしたら良いのでは?」という
前向きな気持ちを持っていくことだと思います。
出来ない/出来ていない、ではなく、
ここからどうしたらよいのか?
ポジティブな考え方は
日々のかかわり方や言葉の使い方が重要だと感じました。
管理職ではなくても、組織は変えていける
会社の組織風土や文化は管理職や経営者が作るもの。
従業員はそれに従うもの。
かつての会社はそういう雰囲気があったと思います。
ただ、管理職でなくても、経営者でなくても
行動することで「変わる部分」がある。
当たり前のことですが、劇的な変化は生まれません。
本質的な変化も簡単には生まれません。
でも、「隣で働く新入社員の〇〇さんのため」
「情報共有がうまく進まず、現場での判断に困っている××さんのため」
自分たちにできる範囲で変えていこうという行動は
小さなリーダーシップ発揮とその成功体験を彼らに伝えたと思います。
プログラム提供をする私たちにとっても、
彼らがこのプログラム活動で感じた小さな行動の大切さが
今後の彼らの大きな行動につながっていくこと。
そしてそれらを通して、組織に変化が生まれることを願ってやみません。
後日談
実はこの会社では、最終の成果発表&フォロー研修が予定されていました。
しかし、受講者から「自分たちでやりたい」と声が上がり、
結果として受講者自らが成果発表の場を作り上げました。
この研修を導入した人事部長も、
当初他の管理職の方から厳しいご意見をいただいていたようですが、
最終的にはそうしたシニア層の行動を見て、
現場の管理職層からも、ポジティブなFBがあったと聞いております。