コラム

研修市場の捉えなおし

皆さん、こんにちは。シェイクの吉田です。

矢野経済研究所が「企業向け研修サービス市場の実態と展望」という
調査を実施しています。この調査によると、2021年の研修市場の市場規模予測は、
5250億円となっています。2011年が4520億円でしたので、
この10年間の平均市場成長率は1.5%程度で、微増の市場であると言えます。

この研修市場という捉え方ですが、私は最近、違和感を持つようになっています。
理由は、研修サービスの範囲が曖昧になっており、研修というサービスが
提供してきた価値が変化している
ことにあります。

これまで、研修とは、日常の業務から離れ、何らかの知識やスキルを
学ぶことを目的に実施されてきました。
目的別に、階層別研修や選抜研修、選択型研修などが研修体系として
整備され、人材育成の主な手段として実施されています。

弊社でも以前から、「研修だけでは人は変わらない」と考え、
研修と職場での実践を結び付けて考えていましたが、
コロナの影響でオンライン研修が主流になる中で、
研修サービスと、研修以外のサービスの境界線がますますなくなってきており、
もはやどこから、どこまでが研修サービスと言っていいのか
分からなくなってきていると感じています。

研修との境界線が曖昧になっていると感じるサービスを具体的に言うと、

  • e-ラーニングなどのITを活用した学習との境界線
  • コーチングなど職場での実践を後押しするサービスとの境界線
  • 研修(Off-JT)と職場での活動(OJT)との境界線
  • 講師が介在する研修と、講師が介在しない受講者同士の学びの場との境界線

などです。

研修で学んだことを職場で実践することを目的にするのではなく、
職場で実践するために、キックオフMTG(研修)を実施することも
増えてきています。
知識やスキルを習得する学びの場が、研修ではなく、職場に移行している
と言ってもいいかもしれません。

そのように考えると、研修市場とは何か、どの範囲を指すことが有効かと
考えるようになりました。

これからの未来を見据えると、「研修市場」という考えではなく
「人材育成市場」として再定義していくことが必要だと考えています。

激動の時代における企業発展の生命線は「人」であることを考えると、
市場を捉え直した時、人材育成市場は益々成長していく市場になっていく
可能性が高いと考えています。

研修というサービスを単体で提供することが少なくなっていく中、
組み合わせで「学習をデザインするサービス」を検討していくことが求められます。

人事担当者の方が、研修を企画する上で、検討すべきと考えられる
視点を3つご紹介します。

一つ目は、「ゴール逆算思考」です。

例えば、2年目研修を企画しようとする際に、2年目の課題から
研修を企画するのではなく、例えば入社3年間のゴールを設定して、
3年間の育成の全体像を企画するものです。
3年間で、自律型人財を育成するというゴール設定をした場合、
職場の実践経験の設計なども含めた、全体像を企画するものです。

そう考えると、2年目に実施すべきは、研修ではなく、
上司だけではなく、他部署の先輩を巻き込んで成果を出す成功体験かもしれません。
研修は、あくまでも全体設計の一要素にすぎません。

二つ目は、「学び合い思考」です。
研修という、講師が受講者に教える場を設計するのではなく、
受講者同士が学び合う場を設計するものです。
もちろん、受講者同士だけだと基準値が下がるリスクがありますので、
基準値を高め合うための仕掛けも盛り込むことが必要です。

研修を設計するというよりは、社員が学び合う仕掛けを
設計すると言ってもいいかもしれません。

三つ目は、「ブレンディッド思考」です。
人材育成に、ITツールの活用は欠かせなくなってきました。

インプットは事前に動画で学習するといった活用をはじめ、
これまでは、受講者が自身のワークシートに書いていたアウトプットが
ITツールの活用で共有することが可能となり、相互学習や
個別のフィードバックが出来るようにもなってきています。

ここまで見てきましたように、企業人事の方が、
人材育成を企画する際には、研修を企画するのではなく、
人の成長を支援するための全体設計を企画することが必要と
なってきています。

これからは、人材育成のパターンは、研修という枠を越えて、
多様化していことでしょう。
個々人に対する個へのアプローチも加速していくと思います。

研修という枠を越えた本質的な人材育成が可能な時代がやってきたと
感じています。

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