効率化に関する2つの事例
皆さん、こんにちは。シェイクの吉田です。
最近、入社半年が経過した大手企業の新入社員から、次のような声を聞きました。
「いかに楽に稼げるかが大事」
「言われたことを効率的にこなして時間内に終わらせることを意識している」
「意味のない仕事はしたくない」
自分にとって、無駄だと思うことは避け、最短距離で意味のあると感じることだけに取り組み、効率的に成果を出し、成長したいという思いを感じます。
さらに、詳しく聞いていくと、「あの上司は合わない」「この仕事はやりたい仕事ではない」と今の環境に見切りをつけ、転職することを視野に入れている人もいました。
また、5年目を対象にした研修では以下のことがありました。
グループワークで、当たり障りのないコミュニケーションに終始し、
議論が全く深まらないのです。表面的には学び合っていますが、
場を乱すことを恐れ、踏み込んだコミュニケーションを避けているように感じました。
職場の様子を聞くと、コミュニケーションが課題となっていて、
相手の背景を聞くことがなく、部門内、部門間連携のいずれにおいても、
協働がうまくいっていないとのことでした。
特に、テレワークの影響もあり、その傾向は顕著になっていました。
「なぜ、踏み込んだコミュニケーションをしないのか?」
その背景には、会社が業務効率化を進める中で、現場では効率化すべきではないコミュニケーションが
効率化されている、という実態があるのではないでしょうか?
また、効率化を促進するために、自分の役割をより詳細に定義したいという志向も見られました。
誰が実施するかが不明な仕事があったとき、全ての仕事に役割を決め、それぞれ役割以外の仕事をしないことが、仕事の効率を上げることであると捉えていました。
自己限定の罠
この2つの事例から感じたことは、効率化がもたらす、「自己限定」の罠です。
個人としては、「コスパ、タイパ」の下に効率化を重視し、会社としても、「生産性向上」の下に効率化が重視されています。
もちろん、効率化そのものは大事であるものの、気を付けなければ、その意識が自分に枠を作る枷となり、「自分は、これだけをしておけばいい」といった自己限定に繋がりかねません。
自己限定意識は、職場の活性化や自由なコミュニケーションを阻害するたけではなく、人の成長や可能性も狭めることになります。
人の成長に必要なのは、「自分の枠を広げる」活動であり、自分の枠を広げたストレッチ経験が、自分の可能性を広げるからです。
人材を育てたい、主体性やリーダーシップを発揮してほしい、と思っていながらも、期待する行動が見られない場合、
コスパ、効率化という流れが、人の可能性を狭めているかもしれないと疑ってみてもいいかもしれません。
一見、無駄に思える雑談が、新たなアイデアを生み、一見、無駄に思える仕事が、成長に繋がります。
AIの時代に人間が担うべき仕事
10月に、サイバーエージェントが、社員のオペレーション業務の6割を、AIで置き換えていく計画を発表しました。
業務効率化の流れは止められません。
一方で、このサイバーエージェントの事例にみられるように、効率化された仕事は、AIが担う時代も早晩にやってくるでしょう。
人が必死に効率化をした仕事をAIが代替した先に、人間がすべきことは何でしょうか?
一見、無駄に思える仕事やコミュニケーションが、AIに代替されない成長や付加価値をもたらすのではないでしょうか?
効率化を推進すると同時に、「効率化の罠」を意識し、そのバランスを考えながら活動することが、成長や付加価値創出において、ますます重要になってきていると思います。