こんにちは。シェイクの吉田です。
皆さんの会社では、新入社員は入社しましたでしょうか?
今年もシェイクは多くの会社の新入社員研修を担当させて頂き、数千名の育成に携わりました。
今回のコラムでは、研修を通じて感じた新入社員の傾向の変化や、今後、私たちがどのように新入社員に向き合い、関わっていくべきかについて、感じたことをまとめます。
「ゆるい」と言われる新入社員
私が多くの会社で人事の方から聞いたのが、今年の新入社員は「ゆるい」という声です。
・提出物を期限通りに出さない
・研修中に寝ている、あくびをしている
・公共の場で騒ぐ、大声で話す
とった事象が目立ち、一度の注意・指摘では改善が見られず、頭を抱えている人事の方に多くお会いしました。
人事の方からは、学生から社会人への意識やスタンスの切り替えを期待され、「厳しく指導をお願いします」というオーダーを受けました。
私が担当したクラスにおいても、シミュレーション研修において、「上司とのアポイントメントをすっぽかす」「他のグループとのコミュニケーションを取らないように伝えても、平気で情報交換する」といったような行動が見られ、例年との違いを感じざるを得ませんでした。
新人に話を聞いてみると、「内定者時代は、人事の方が内定者に寄り添い、『同期同士仲良くなりましょう』と言われてきたので、そのスタンスで研修を受けていました」とのことでした。企業としても、内定辞退を防ぐために、内定者をお客様扱いし、ゆるさを許容してきた結果とも言えるかもしれません。
新入社員自身は、その後、「そのゆるさで大丈夫」と感じてしまっていたことを反省していました。
新入社員研修での印象的な出来事
さて、そのような背景を持つ新入社員が、社会人として活躍していくためのマインドセットを持ち、前向きに学び、成長し続けていくために、私たち、上司や先輩、人事、研修会社は、何を意識していくとよいのでしょうか?
単に厳しく接するだけでは、表面的な行動は変わっても、心の中では他責感情が生まれ、望ましいマインドセットにならないリスクがあるように思います。
一方で、褒めて育てる、承認するアプローチだけでも、ゆるさが解消されず、学生気分が継続してしまうリスクもあるでしょう。
シェイクの新入社員に、他社の新入社員研修に立ち会って感じたことを聞いたところ、次のような感想を持っていました。
「ある会社での研修でファシリテーターが、『去年の受講者はここまで出来ていたよ』『他の人もできているのだから、できるでしょ』といったメッセージを伝え、受講者の意識が前向きに変わっていったことに驚いた」とのことでした。
弊社その新入社員の場合は、「出来ていない」と指摘されるよりも、受容される方が頑張れるため、他者との競争をあおるような指摘で火が付く新入社員が新鮮に映ったとのことでした。
受容される方が頑張れると感じる背景を聞いたところ、「これまでの人生で、SNSなどを通じて、常に他者と比較され続けてきている。人より劣っているということは、今さら言われなくても分かっている」とのことでした。「むしろ、見てくれていている感覚、受容、承認が頑張る動機になる」とのことでした。
基準値を示して、引き上げるアプローチで動機づけられる人もいれば、承認や受容で引き上げられる人もいそうです。
別の社員からは、次のような話を聞きました。
人事の方から、「他の人を尊重せずに頭ごなしに否定してしまう」との共有を受けていた受講者がいました。
その研修を担当したファシリテーターは、受講者に対して、頭ごなしに否定をするのではなく、良い行動を見つけてきちんと承認する、そしてそれを聞いて真似をした人がいると、またそれを承認する、といったことを繰り返しました。
そうしていると、問題だと言われていたその受講者が他の受講者に対して、「めっちゃ発表上手かったよ!!自信ないって言っているけど、全然そんな風に見えなかった!」というように、相手を否定するのではなく、全力で承認する姿に変化したとのことでした。
新入社員に対するアプローチ
私自身、今年の新入社員研修を実施して感じたのは、「新人育成がより人間的な営みになってきた」ということです。
一昔前は、人事の方から「厳しくしてください」というご要望を頂くと、厳しく接して、求められている基準値を示し、現状とのギャップを見せることが出来れば、新入社員の心に火が付くというアプローチが機能していたと言えます。
そして、受講者も、「社会とはこういうものだ」と決してネガティブな意味でもなく、自然と受け止めていたように感じます。
しかし、現代においては、画一的なアプローチが機能しなくなりました。それでは、これからの時代の新人育成におけるポイントは何なのでしょうか?
私は、そのキーワードに「感情」があると感じています。
従来通りのアプローチで火が付く人もいれば、むしろ気持ちが冷めていく人もいます。
自分のことを見てくれている、信じてくれていると感じることで、厳しいフィードバックも受け止めて、必死に変革を起こしていこうとする人もいます。
以下の2つの感情へのアプローチが有効だと感じます。
1.「受容されているという安心感」という感情
「自分のことを見てくれている、存在を承認してくれている」という安心感は、今まで以上に重要になっていると思います。この安心感という感情を抜きにして、高い基準値を示されたり、厳しいフィードバックを受けたりしても、素直に受け止められません。安心感があるからこそ、素直に受け止められるようになるのです。
2.「達成感」や「悔しさ」という感情
仕事は、「感情を出してはいけないもの」ではありません。感情こそがエネルギーであり、行動の原動力となります。私たちは、新人に主体的に行動するように求める一方で、感情を排し、論理で人を動かそうとしがちです。研修においても、仕事においても、「達成感」「悔しさ」といった、感情が動く、揺さぶられる経験をすることが、エネルギーレベルの高い人材育成に欠かせません。
もちろん、「感情的にキレる」「感情で仕事を拒絶する」「上司に嫌な顔をする」といったことを奨励したいわけではありません。
ここの明確な線引きをすることは、指導する立場としての私たちの役割でしょう。その線引きをしたうえで、感情を意識した育成をしていくことが大切だと感じました。
皆さんは、どのようなことを感じられたでしょうか?