WORKS 株式会社ワコール 様
-組織の変革を担う「自律革新型マネージャーの育成」- 組織として変革が求められている今、組織の中核を担う課長層から変革を巻き起こす

株式会社ワコール
人事総務本部 人事部 人材開発課 専任課長
沢村麻衣子様

●会社プロフィール:1949年創立。ワコールグループとして世界約50カ国で展開し、 インナーウェア、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品や関連製品の製造、卸売販売及び一部製品の消費者への直接販売を展開。2019年には創立70周年を迎え、「世界のワコール」を目指し業界を牽引するリーディングカンパニー。

●実施概要:新任課長及び既任管理職層を対象に、マネジメント層の底上げと意識変革を目的として、「WACOAL TERAKOYA」の中で次世代マネジメントプログラムを4日間にわたり実施。2019年度、4日間の研修のうちシェイクは「ビジョンに基づいたチームの戦略策定」「付加価値を高めるチームマネジメント」の2研修をワコール様と共に企画、実施。組織の変革を担うマネジメント層の意識改革、マネジメントスキルの向上を支援している。

※企業名、担当者肩書き、プログラム名はインタビュー実施日(2020年10月)のものです。

「ワコールグループを取り巻く社会も顧客も変化している中、画一的な美の基準に捉われず、自分らしい美しさを求めるお客さまが増えてきている」(ワコールHD 社長安原様より)というメッセージにもあるように、顧客の変化を察知し、「やめる勇気」と「はじめる覚悟」、そして「スピード」と「前例にとらわれないこと」が必要とされるワコールにおいて、マネジメント層に今どんな変化が求められるか、沢村様に伺った。

●Q1.  昨年「健全なコンフリクトを起こしながらも、本質的な議論ができる風土になっているのだろうか」「マネージャー自身が率先して新しい挑戦をしているのだろうか」という課題意識や、チームとしての生産性の向上、多様な個人への対応、人材育成の在り方など外部環境的にもマネジメント層の変革が求められている中、部課長の意識変革とマネジメント力向上を目的に2つの研修をご一緒させていただきました。

ファシリテーターを務めた私から見て、受講者の皆さんは経営理念にたいする共感、人間的な魅力があり、人への貢献欲求が高いと感じた一方で、イノベーティブに考える、新たな価値を生み出す、ということにリーダーシップを発揮し、日常の業務の中に組み込むというところまではいっていないのではという印象を受けました。昨年を振り返り、改めて沢村様の企画当時の想いや課題意識、マネジメントプログラムの企画ゴールを教えていただけますか?

沢村様:当社は経営理念を具現化するため、「自律革新型人材」として、“自らの成長に責任を持ち、主体的にチャレンジを続け新たな価値創造ができる人材”を育成することを掲げております。

しかし現状はといえば、部門によっては依然として上からの指示(意向)に対して指示(意向)通りに動く、という傾向が組織風土として残っているのではと感じています。一方で、経営陣からは過去数年にわたるコーポレートスローガンの中で「変えよう」「出る杭になれ!」「やめる勇気、はじめる覚悟」といった 「変革」に対する強い思いが発信されています。まずはマネージャー自身が、「自律革新型マネージャー」としてあるべき姿「リスクをとってチャレンジし、変革を推進する姿」を体現し部下に示すことが第一段階として重要であると感じ、部課長向けの研修プログラムを一新いたしました。

昨今はプレイングマネージャーとして時間を取られたり、より多様な働き方、価値観、雇用形態のメンバーに対して人材育成やモチベーション開発をしなければならないなど、マネジメント職務はこれまで以上に複雑化、高度化していると感じています。そのような中で、一人ひとりの部課長が目の前のミッションに忙殺され、日々の業務を前例踏襲でこなし、上からの指示に対して、違和感・疑問を感じても声をあげないまま従うのではなく、顧客視点に立ちバックキャスティングの思考で戦略を立て、意思決定をしていくべきだと考えています。マネージャー自らが変革をリードすることによって、部下は失敗を恐れずに後に続くことができ、当社が掲げる「新たな価値創造」を実現できる人材開発と組織風土の土壌ができると考えています。

弊社 吉田:昨年のプログラムが一新された時からご一緒させていただき、貴社が社会と繋がっている企業だということを強く感じています。

具体的には、「自社の利益のために頑張っています」ではなく、「世の女性のために、世の中のために世界のワコールを目指す」という会社であると受講者の皆さまの言動や貴社の掲げる理念から感じておりますので、貴社の掲げる変革を乗り越えていく力になりたいと心から思っています。

そして、その変革の起点が現場のマネージャー陣だと考えています。 昨年度、ファシリテーターを務めた私からみて、受講者の皆様は下記の特徴がある、非常に人間的な魅力のある方々だと感じました。

貴社の受講者の皆様の特徴
・人の良さ
・理念に対する共感
・チームとして協働する姿勢

さらに、受講者の皆さんは”上から指示に従って決められたことを着実に遂行していく”という意味では非常に優秀な方が多いと感じました。一方で、沢村様がおっしゃるように「付加価値の創出や変革」が今自分たち管理職に求められている役割であると認識し、それを実現していくという意志を動機付けることにより、組織全体としてより一層強くなっていけるのではないかという印象を受けました。

沢村様:変革を起こす中心として、ファーストラインマネージャーである課長層から組織の変革を推進していけると私は考えています。課長からすれば、いや上司の部長が保守的で変革の必要性を感じていないのに、課長の立場で何もできるわけないよ、と思われる方もいるかもしれません。それでも私は課長に危機感と覚悟とパワフルなアイデア(信念+戦略)があれば、変革をリードできる立場にいると思っています(少なくとも当社では)。例えば、部長が保守的でも、その下にいる3人の課長が変革を推進していければ、部長に行動変容を促せるのではと思っています(もしくは3課長が連携して勝手に変革が起きていく)。一方、部長一人が声高らかに変革と叫んでも、3人の部下(課長)が保守的で、変革の意義や目的、そのための戦略を考えることができなかったら結局メンバーは課長から指示がおりてくるので本質的な変革や改革は進まないと考えています。余談ではありますが今後人事部としては変革に対する意識が高く、有言実行し、成果をあげた人材が適切に評価・処遇される制度、仕組み作りの構築に取り組んでいきたいと考えています。

当社はこれまで課長に任用されたときの指名制の新任課長研修後、課長陣が研修を受ける機会はありませんでした。それを昨年度から手挙げ制に変更した意図としては、下記3点が挙げられます。

①マネジメントの在り方が変わってきているなかでアンラーニング(学び直し)が必要だと感じたこと
②課長同士の横のつながりの中で自身の考え、価値観、マネジメントスタイルを客観視する機会が必要だと感じたこと
③マネジメント層が当事者意識を持って変革のために学ぶ姿勢を示し、率先して行動を起こすことが重要だと感じたこと

また課長自身が学び直し、行動するということはメンバーにとってもチェンジマネジメント※のきっかけになると考えています。

※チェンジマネジメントとは・・・
変革の内容や狙いを経営陣のみならず全社員で共有し、社員の意識改革を促すことで効率よく確実に変革を推進するマネジメント手法。

本研修では、組織の中核を担う対課長層を対象としているのですが、組織は課長を起点に変わっていくでしょうか。吉田さんのご意見をぜひうかがいたいです。

弊社 吉田: 課長層から組織は変わっていくと思います。課長層が、経営視点をもって上司に対して論理的に全体最適な意見を伝えられることが重要です。ただ自身の意見を伝えるだけではなく、戦略的に物事を動かす立ち位置に立つべきだと思います。

研修に指名されて参加されるのではなく、自らの意志で参加したという背中を部下はよく見ているので、マネージャー自身が変革していこうという後ろ姿(意志)を見せること自体が大きな影響があると思います。

そして実際、受講者の皆さんと接する中で、マネジメントに対して、「なんとかしていこう、変わっていこう」という意識が高い方が非常に多い印象を受けました。

通常、管理職研修では、もっと斜に構えている人が多くいらっしゃるのですが、 貴社の場合は、”変わっていかないといけない会社状況”という会社からのメッセージを受講者の方が受け取って、理解しており、学ぶことに対して貪欲な姿勢が素晴らしいと感じました。

周囲に相談相手のいないマネージャー同士が繋がることも価値がある

沢村様:実業務から離れた形で、マネージャー同士が有機的に繋がっていく“場”作りはリモートワーク環境下で、より一層重要になってくるのではと思っています。なぜなら、リモートワークをしていると、必然的に業務で関連のある人とは、コミュニケーションをとりやすい分、偶然の出会い(廊下ですれ違ったり、社食で会ったり)がないため雑談の機会が圧倒的に減ってしまいます。

一方でマネージャーという立場は、戦略や施策を始め、部下のこと、チームの運営に対する悩み事などを周囲に気軽に共有しにくい立場にあるため、孤独を感じやすいと思います。 そのような中、研修という機会の中で新任課長から既任課長まで混合で実施したことにより、抱えている悩みを様々な参加者同士で休憩時間やエクササイズの中で共有できることは意義があると感じています。変わらねばという責任感や本当にうまくいくのかなという不安感を一人で抱え込むより、同じ思いを経験している仲間とつながり、対話することで、背中(モチベーションスイッチ)を押されることがあるのではと思っています。そのような相互啓発を促すことで、組織の活性化や組織力の強化を促進していきたいと考えています。

弊社 吉田:実は、休憩の際などに受講者の皆さんがコミュニケーションをとるという光景は他社ではなかなか見られなかったりします。役職が上がるほど、皆さん休憩の際にはPCに張り付いていたり、コミュニケーションをとらないという光景はよく目にします。

しかし、貴社の場合は、マネージャーの皆さんがつながりを持ち、互いに率直に悩みや感じていることを伝えあっており、それが非常に大きな強みであると感じました。


●Q2. 今年は昨年よりバージョンアップしたマネジメントプログラムを実施したいと考えています。具体的には、コロナ禍において御社では全内勤社員を対象にテレワークを拡大、推進していると聞いています。リモートワークマネジメントの急速な普及に対して、貴社の管理職の方々は何に課題意識を持たれていますか?

沢村様:大きく4つあると思います。1つ目は、コミュニケーションの難しさ(部下が今何を考え、どんな様子で、モチベーションはどうなのか把握が難しい)。2つ目は、OJTを含めた人材育成(特に新入社員やキャリア採用入社員へのオンボーディングの困難さ)。3つ目は仕事内容、プロセス、成果に対する評価のつけ方。4つ目が労働時間の管理だと思います。吉田さんはリモートワークにおけるマネジメントのポイントは何だと思いますか。

弊社 吉田:テレワークにおけるマネジメントのポイントは下記の3つであると考えておりますが、貴社にも当てはまりますでしょうか?

テレワーク下でのマネジメントのポイント
① 雰囲気で伝えるマネジメントからの脱却(ハイコンテクストなコミュニケーションからの脱却)
② 組織としての自律性、個人としての自律性支援(具体的な結果・成果につながる行動支援)
③ 組織とのつながりの低下、メンタルヘルスへの対応

沢村様:当社では、特に①と②が重要だと考えています。

これまで具体的な指示や説明をしなくとも、お互いに相手の主張を汲み取りながら阿吽の呼吸みたいなものでもコミュニケーションが取れていたように感じます。しかし、同じ空間にいることで成立していたコミュニケーションがテレワークでは通用しなくなったため、受け手のレベル感、視座に合わせてより具体的に説明したり、必要に応じてプロセスを一緒に整理するといった具体的な業務支援が求められるようになっていると思います。

弊社 吉田:そうですね、行動を成果に繋げるため、マネージャーは具体的な行動支援をよりとってあげることが重要になってくると思います。

スキル・モチベーション・プロセス、どこでつまずいているのかを見極め、成果を出させてあげる支援ができることが一層マネージャーに求められてきているため、今年度の研修プログラムではそういったマネジメントの変化をとらえてプログラムに反映させていきたいと思います。

沢村様:今後は組織としての自律性と個人の自律性が一層求められるようになり、成果志向(アウトカムベース)の働き方にシフトしていくと思います。したがって、成果に繋がるような具体的な行動支援をすると同時に、働き方も仕事の進め方(プロセス)もある程度は裁量権を与えて個人に自律性を求めていくことをやっていかなければいけません。もちろんそのためには一人ひとりのメンバーが「自律革新型人材」として弊社が掲げる人物像を理解し、体現していくということも重要であると考えています。「自律革新型人材」は2019年度に再定義し、下記5つの要素から構成されています。

・経営理念(目標、社是、経営の基本方針)を尊重し、具現化できる人材
・既成概念や現状の枠組みを見直し、熱意をもって革新できる人材
・主体的に自己の能力を高め、新たな可能性にチャレンジできる人材
・良好なチームワークを構築し、組織目標に貢献できる人材
・健康的で健全な生活習慣を実践できる人材


●Q3. 最後に、今年度次世代マネジメントプログラムの実施に向けて、沢村様から弊社への期待やご要望を聞かせていただけますでしょうか?

沢村様:当社は前期より要因計画マネジメントの戦略的実行を人事部の重点施策として、全社で業務改革を遂行しています。昨年度実施した「生産性と付加価値を高めるチームマネジメント」の研修では、いくつかのフレームワークを基に実務(業務改革)に応用できるよう当社における業務改革の目的をシェイク様にもご理解いただき、一緒にプログラム開発をおこないました。

本研修に関わらず、当社で展開している研修は全て業務の活用・応用を意識してプログラムを企画・開発しています。研修の場面で起こりがちなこととして、人事施策、研修内容、現場での仕事がつながっていないように見えてしまうことがあります。今後は人事施策、研修内容、現場での業務がどう連関しているのか、受講者により理解してもらえるように研修内容を設計していきたいと考えています。

弊社 吉田:わたくしも昨年度は、現場でやらないといけないことが具体化された形で研修内容を盛り込めたことは、良かったと感じています。会社からのメッセージと目の前の業務をうまく研修でつなげられるよう、今年も工夫をしていきたいと思います。

今年度の次世代マネジメントプログラムでも、実際に受講者の皆さんにとって現場で生かせる学びとなるようにプログラムを実施できればと思います。

沢村様:ありがとうございます。2020年10月発信の伊東(株式会社ワコール 代表取締役 社長執行役員)からのトップメッセージの中で、「私たちは製造から販売までを一貫して管理する真の『製造小売業』であり、『データドリブンカンパニー』ともいえます。独創的な企業であることに誇りを持ち、大いなる将来に向けた変革を必ず成し遂げたいと思います。」と社内外に発信しています。独創的な企業であり続けるためには、バリューチェーンやビジネスモデルに加えて、そこに在籍する社員一人ひとりが独創的である(独自の考え、アイデア、発想を持って、新たな価値を創造していく)ということが大前提であり、「変革」というのはそのプロセスの中で、もしくは結果として起こることだと思っています。ですので繰り返しにはなりますが、マネジメント層から日々の業務の中で感じる違和感に対して敏感になり、物事を正しく疑い、判断していく。そしてリスクを取り、新たな可能性にチャレンジすることを実践していく。ちなみにここでいうリスクとは、うまくいかないリスク、失敗するリスクというよりは、自身の中にあるもっと内的なリスクの方が大きいかもしれません。誰だって自分のことは守りたいですし、同調圧力の中で安心安全な枠の中にいたいと思うのも理解できます。けれど健全なコンフリクトや議論を避けずに、変革のために正しいことを決定し、実行していく。

このような前向きな一歩の積み重ねが習慣化されることによって個々人の行動変容へとつながり、改革や変革のための風土創りにつながると信じています。

そしてそんな変革の中心をマネージャー層から担ってほしいと願っていますし、私自身もそれを体現していくことでメンバーにも促進していきたいと考えています。

参考までに:https://www.wacoal.jp/about/

弊社 吉田:冒頭でおっしゃっていただいた研修プログラムを一新した原点の部分はそこにあるんだろうなと感じました。コロナは一つのきっかけであり、原点を見失わないように変革を進めたいですね。

市場的に見ても、変化しなければいけないことがより加速的に進んでいる状況などもあり、やはり前年踏襲をそつなくこなせる人材の価値は下がってきており、「変革を起こせる人材」の割合を増やさなければいけない状況だと思います。

特に御社のような業界では、大きな変化の流れが来ている中で、イノベーションを起こすにしても上層部の意向を汲み取りすぎるあまり、自らの考えを主張できない人がイノベーションを起こせるのかという部分もあると思いますので、まずはその大前提の部分を変えていく必要性があると考えています。

そこを率先して取り組もうとされているのが御社の特徴であり、他社にも先駆けながら取り組んでいらっしゃるのがやはり先進性のある会社だなというのを感じています。


●プロフィール
人事総務本部 人事部 人材開発課 専任課長 沢村麻衣子様

慶應義塾大学 総合政策学部 卒業後、ワコールに新卒で入社。事業戦略・マーケティング業務に携わり退社。外資系企業に転職後、シンガポールへ帯同し6年半駐在。本帰国後、ワコールに再入社。人事部 人事企画課にて働き方改革に伴う諸制度を導入。現在は人材開発課にて新卒・キャリア採用、全社人材育成プログラムの企画・開発、人材データ分析を基にしたタレントマネジメント、キャリア自律促進プログラムの構築等に携わっている。ギャラップ認定ストレングスコーチ、国家資格キャリアコンサルタント。

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