コラム

ISO30414とリーダーシップ

皆さん、こんにちは。シェイクの吉田です。

「企業は人」という言葉があります。人こそが企業価値を生み出す最大の資産であるという意味です。
変化が激しい時代になればなるほど、人的資本が企業の競争力を左右するようになってきており、これまで以上に「企業は人」の時代がきていると思います。

これまで、企業が開示する情報は、PLやBSといった財務諸表が中心でしたが、このような流れを受けて、人的資本を企業が開示する動きが加速しており、そのガイドラインが「ISO30414」です。

「ISO30414」は、11の項目と58の指標で構成されていて、開示項目に「リーダーシップ」があり、指標に「リーダーシップに対する信頼」という指標があります。今回は、「ISO30414」に沿った「リーダーシップに対する信頼」について考えてみたいと思います。

簡単に言うと、「管理職のリーダーシップを評価して開示すること」が企業に求められているということです。ISO9001(品質マネジメント)やISO14001(環境マネジメント)が義務であるのに対して、ISO30414は自主的なガイドラインで、やり方や開示内容は企業に委ねられていますので、企業ごとにリーダーシップの可視化や開示方法を定めることが必要です。

リーダーシップの可視化と開示を実現するには、3つのステップがあると考えています。

まず第1のステップは、「自社の事業に沿った、リーダーシップの明確化」です。

自社で求められるリーダーシップは明確になっているでしょうか。
経営戦略や組織戦略に基づいて、どのような能力の可視化が必要であるかを明確にすることです。
そして、そのリーダーシップ行動に沿って、育成施策を連動させていくことが必要です。

リーダーシップ行動を明確に出来ていない企業では、管理職育成が、目の前の課題を解決するだけの育成になっているケースが見られます。

  • 職場のコミュニケーションが疎かになっているからコミュニケーション研修を実施する
  • 戦略思考が弱そうだから戦略研修を実施する


といったものです。

目の前の課題解決だけを目的とせず、経営戦略、組織戦略に沿って、どのようなリーダーシップ開発が必要であるかを明確化することが先決です。

ステップ2は、「リーダーシップサーベイの実施と改善のための育成の実施」です。

皆さんの組織では、管理職に対する「リーダーシップサーベイ」を実施されているでしょうか? 期待されるリーダーシップ行動に対して、上司や部下、同僚からサーベイを取得して定量化するもので、いわゆる「360度サーベイ」と呼ばれます。まず、定期的にリーダーシップサーベイを取得することが必要です。

最近、管理職研修を実施させて頂いた際に、次のようなことがありました。
その会社では、定期的に管理職に対する360度サーベイを実施して、結果を管理職自身に返却して自己内省のツールとして活用していました。

管理職経験の長い受講者が次のような発言をしていました。
「定期的にサーベイを受けていますが、いつも同じ課題を書かれるのですよね」と。

その管理職にとっては、自分では課題は分かっているものの、長年の間、課題を克服できずにいました。周囲のメンバーからすると、毎回、管理職に対して課題をフィードバックしているのに、一向に改善されない状況となっていました。リーダーシップの可視化や返却だけでは不十分で、改善内容の本人に対する落とし込みや行動変容のモニタリングが不十分でした。

「リーダーシップ行動の明確化」→「サーベイ実施」→「育成施策の実施」→「モニタリング(可視化)」といったサイクルを回し続けることが必要となってきます。

このようなサイクルを回す中で、「ISO30414」で定められた情報開示だけをゴールにしないことが大事だと思います。

「リーダーシップに対する信頼」の開示が求められていますので、可視化して開示することは当然必要ですが、同時に、この仕組みを活用して、一人一人が成長し続ける仕組みを構築する視点が大切だと感じています。

サーベイデータを活用した研修を実施すると、管理職の方から「こんなに自分のことを深く見つめたのは初めてだ」といった言葉を聞くことがあります。

「自分自身は何者だろうか」「自分は何をしたいのだろうか」

一人一人がこのような問いに向き合って、深い内省を通じて自分の人生を見つめる機会が増えていくことが、本質的なリーダーシップ開発に繋がっていくのではないでしょうか。

各企業が「ISO30414」の実践をする中で、本質的な育成が広がっていく機会になることを願っています。

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